Last Updated on 2025年1月6日 by 渋田貴正

合同会社設立に必要な出資金とは?

合同会社では、社員は1円以上の出資が必要です。株式会社でも「1円会社」というのが昔話題になりましたが、同じように合同会社でも出資金としては1円あれば会社を設立できます。(登録免許税など会社設立のための実費は別途かかりますが。)

それでは、合同会社での出資額は、資本金になるのでしょうか?

会社法445条では、「株式会社」は、出資を受けた金額のうち2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。(資本準備金に計上する)と定められています。逆の見方をすれば、出資を受けた金額のうち2分の1以上は資本金として計上する必要があるということです。

(資本金の額及び準備金の額)

会社法 第445条
  1. 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
  2. 前項の払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
  3. 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

ここで重要なのは、この条文は株式会社にのみ適用されているということです。同じような条文で合同会社に適用されるものはありません。

であれば、合同会社では出資を受けた金額について、資本金に計上しなければならない割合について制限はないということになります。つまり資本金を0円にして、出資額全額を「資本剰余金」(合同会社では資本準備金がないため)に計上することも可能です。登記事項証明書の上では資本金0円ということになります。

これは会社設立のときも、設立後の増資のときも同様です。例えば、新たに500万円の出資を受けた場合でも、資本金を0円のまま「その他資本剰余金」に計上することで、増資登記を不要にすることができます。

柔軟な資本金設定のメリット

合同会社における資本金設定の柔軟性は、税務面でのメリットも生みます。特にメリットがあるのは消費税の納税義務に関する特例です。

会社設立1期目と2期目については、期初の資本金が1,000万円以上の場合、売上規模に関わらず消費税の納税義務が発生します。一方、合同会社では、いくら出資額が大きくても資本金を0円に設定することでこの条件を回避できるため、消費税の免税事業者としての特例を受けることができます。(インボイス制度の登録をすると子のメリットを享受することもできなくなりますが。)

さらに、労働者派遣事業など高額な資産要件を満たす必要がある場合でも、資本金ではなく純資産額を基準とするため、資本金設定の自由度を活用して柔軟な資金運用が可能です。合同会社であれば、消費税の免税事業者になりつつ、労働者派遣事業の許可要件である2,000万円の純資産要件を満たすことも可能ということです。

資本金0円のデメリット

一方で、資本金を0円に設定することにはデメリットもあります。主な懸念点として以下が挙げられます。

  1. 信用力への影響
    資本金は会社の信用力を示す指標の一つです。取引先や金融機関が登記事項証明書を確認した際に、「資本金0円」を見て不信感を抱く可能性があります。この方法自体が会社法の知識がないとできないテクニカルな話なので、一般的にみれば非常にいびつに見えることは否めません。特に融資を受ける際には、資本金の額を補足説明する必要が生じる場合があります。
  2. 事務的負担の増加
    取引先に対する説明や、帳簿上の取り扱いが複雑になる場合があります。特に出資金の使途や剰余金の扱いについては専門家のアドバイスを受けることが重要です。

合同会社は資本金設定の自由度が高いため、設立時や増資時に資本金と資本剰余金の間で柔軟な金額設定が可能です。ただし、資本金0円という選択肢はメリットだけでなくデメリットも伴うため、設立時には慎重に検討する必要があります。

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