国庫帰属法とは?

所有者不明土地というのは、相続などを通して所有権が相続人に移転しているにも関わらず、相続登記が行われず、数代経過した結果、だれが持ち主か分からなくなってしまった土地です。所有者不明土地といっても、所有者が不明なだけでどこかの相続人の土地である可能性があります。誰かの土地を、国や自治体が勝手に利用するわけにはいきません。実際、当事務所に相続登記をご依頼いただく方にも、地方の山林などは相続登記しないという選択をされる方もいらっしゃいます。

こうした所有者不明土地の問題を解決するために制定されるのが「国庫帰属法」です。国庫帰属法では、所有者不明土地の発生を防止するために、相続により一定の土地を取得することになった相続人が、国にその土地を引き取ってもらう制度です。相続人としては、相続登記をする必要もなくなりますし、国としても所有者不明土地を抑制できる効果が期待できます。

もともと、民法には以下の通り規定があります。
民法第239条
2項 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
この規定について具体的に定めたものが国庫帰属法といえます。

国庫に帰属させる条件

どんな土地でも国庫に帰属させられるとなると、国にコストを転嫁するつもりで土地の管理がおろそかになるなどの恐れがあるため、国庫に帰属させられる土地については基準が設けられます。

まず、対象となる土地は相続や遺贈の対象となる土地に限られます。今保有している土地が必要ないからといって、国庫に帰属させられるというわけではありません。

また、以下のいずれかに該当する土地は、国庫に帰属できる土地の対象となりません。

1)建物が建っている土地
建物が建っていると、解体費用などが発生します。こうした土地まで国庫に帰属させられるとなると、建物の解体費用まで国が負担することになってしまいます。国庫帰属の制度を利用したい場合は、まずは建物を相続人の負担で解体してから、ということになります。

2)抵当権などの担保権や、地上権などの用益権が設定されている土地
抵当権や根抵当権などの権利が設定されている土地を国庫に帰属させられるとなると、国がそれらの権利者に対して責任を持つことになってしまいます。そこで、これらの権利が登記されている土地については、国庫帰属に先駆けて、相続人の負担で、その権利の登記を抹消しておく必要があります。

3)通路など、相続人以外の使用も予定される土地
相続人以外の人との調整が必要になる土地(例えば公衆用道路など)については、国庫による管理になじまないため、国庫帰属の対象外となります。

4)土壌汚染により汚染されている土地
汚染された土地を国に管理させることはできません。

5)境界が明らかでなかったり、所有権の帰属に争いがある土地
権利に争いがある土地について、そのまま国庫に帰属させるとなると国が解決のためのコストを負担することになります。そのため、こうした土地については、争いを解決してから

全体として、国庫に帰属するということは、国、つまり税金で帰属した土地を管理するということです。そのため、国が管理することで国民にとって利益になるようなケースであることが必要ということです。