Last Updated on 2025年2月3日 by 渋田貴正
減資とは?
株式会社において、減資とは、資本金や資本準備金を減少させる手続きをいいます。資本金を減少するといっても、実際にお金が外部にでていくわけではなく、貸借対照表の「株主資本の部」の数字がつけ変わるだけです。
ただし、資本金の減少の場合は、登記されている資本金の金額にも変更が生じますので、資本金の減少の登記が必要となります。減資は、会社の信用力に関わる重要な変更となるため、会社法上の手続きが義務付けられているからです。
また、合同会社(LLC)の場合は、株式会社とは異なる規定があるため、合同会社で減資を検討する場合には慎重な確認が必要です。
減資を行う目的
株式会社において減資を行う目的は、主に以下の通りです。
1)会社の事業縮小に伴い、株主に余剰資金を配当するため
2)資本金を減らすことで、各種の税制上の優遇措置を受けるため
3)欠損金がある会社が配当を行う目的で欠損金を補てんするため
4)合併の際の合併比率の調整のため
特に3の「欠損金の補填」は、企業が再建を図る際によく利用されます。貸借対照表上の欠損金を減らすことで、財務状況を改善する効果が期待されます。
減資自体は、資本金や資本準備金を減少させる手続きで、配当と直接関係はありません。とはいえ、減資を行うにはその目的も含めて、株主総会等で決議します。配当で社外にお金が出ていくこと前提とした減資を「有償減資」、欠損補てんなど社外にお金が出ていかない減資を「無償減資」といいます。
項目 | 有償減資 | 無償減資 |
---|---|---|
定義 | 減資により株主に資金を返還する減資 | 会社内部で資本金や準備金を減額し、欠損補填などに充てる減資 |
お金の流れ | 株主へ資金が支払われる(資産の流出あり) | 社外に資金は流出しない |
目的 | 株主への資金還元、事業縮小 | 欠損補填、財務改善、税制上の優遇措置 |
影響 | 株主の持ち株の価値が変動する可能性あり | 財務諸表上の資本構成が変わるだけで、株主の持ち株には影響なし |
債権者保護手続き | 必要(資産が流出するため、債権者に不利益をもたらす可能性がある) | 必要(ただし、一定の条件下では不要) |
手続きの決議 | 株主総会の特別決議が必要 | 株主総会の普通決議または特別決議が必要(内容による) |
登記の要否 | 必須(資本金の減額登記) | 必須(資本金や準備金の減額登記) |
減資の手続き
減資を行う場合は、パターンに応じて以下の決議が必要となります。
以下のケース以外 | 株主総会の特別決議 |
資本金の減少額を全額欠損補てんに充てる場合 | 定時株主総会の普通決議 |
増資と減資を同時に行って、結果資本金の額が変わらない場合 | 取締役の決定または取締役会の決議 |
資本準備金の減少の場合 | 株主総会の普通決議 |
欠損補てんについては、欠損の額を決算の数字から正確に把握するため、定時株主総会に限定されています。
減資を行う際には、以下の3点を決議する必要があります。
資本金の減少の場合
1)減少する資本金の額
2)減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときはその旨と準備金にする額
3)資本金の額の減少の効力発生日
準備金の減少の場合
1)減少する準備金の額
2)減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときはその旨と資本金にする額
3)準備金の額の減少の効力発生日
債権者保護手続き
資本金を減少させる場合は、有償減資であれば配当として会社の資産が社外に出てしまいますし、無償減資であれば将来配当できる金額を増加させる可能性があります。いずれにしても、会社の債権者からすれば、自らに弁済するべき金額が社外に流れる可能性があるため、債権者保護の手続きが必要となります。
準備金の減少についても、同様に債権者保護手続きが必要ですが、以下の場合については、準備金の減少について債権者保護手続きは不要となります。
1)減少した準備金を資本金に組み入れる場合
2)定時株主総会の決議で、減少する準備金を全額欠損の補てんに充てる場合
債権者保護手続きは、公告の方法に応じて、以下の通りです。
定款の公告方法 | 公告 | 知れている債権者への格別の催告 |
官報 | 官報 | 必要 |
日刊紙 | 官報 | 省略できる |
電子公告 | 官報 | 省略できる |
減資による登記
減資を行った場合には、以下のケースで登記が必要となります。いずれも、資本金の額が変動します。
1)資本金を減少した場合(資本金が減少)
2)準備金を減少して、資本金に組み入れた場合(資本金が増加)
登記申請には、株主総会議事録、公告の証明書、債権者保護手続きを行った証拠書類などが必要になります。申請手続きは専門的でミスが許されないため、司法書士や行政書士に依頼するのが一般的です。
当事務所では、減資の登記のほか、債権者保護手続きのための官報公告や知れたる債権者への催告など、減資の手続きをまるごと代行しています。株式会社の減資の手続きについてはぜひ当事務所にご相談ください!
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。