Last Updated on 2025年2月6日 by 渋田貴正
合同会社における減資とは、資本金または資本剰余金を減少させることを指します。株式会社と異なり、合同会社には資本準備金が存在しないため、資本準備金の減少という手続きはありません。そのため、合同会社における減資の方法は、以下の3つのケースに限られます。
合同会社で減資ができるケース
ケース | 内容 |
損失の補填(てん補) | 過去の損失を補填する目的で、資本金の一部を資本剰余金に振り替える。 |
出資の払い戻し | 社員(出資者)の退社などに伴い、出資額の払い戻しが行われる際に、資本金の一部を資本剰余金に振り替える。 |
持分の払い戻し | 出資者に対し、資本金の一部を直接払い戻す。 |
株式会社のように、資本金を資本準備金に振り替えて税制上のメリットを得るといった方法は、合同会社では認められていません。そのため、合同会社では社員加入などの増資のタイミングでの資本金の計上額を慎重に決める必要があります。
合同会社の資本金の考え方
合同会社では、会社設立時の資本金を0円とすることも可能ですが、対外的な信用を考えると、ある程度の金額を設定するのが一般的です。たとえば、100万円を資本金に計上し、残りを資本剰余金として計上する方法もあります。
株式会社では、増資額の50%以上を資本金に計上しなければなりませんが、合同会社にはこの制約がないため、より柔軟な資本金の管理が可能です。しかし、減資を行う場合には一定の手続きが必要となるため、資本金の設定には慎重を期すべきです。
合同会社の減資手続き
合同会社で減資を行う場合、定款に別段の定めがない限り、業務執行社員の過半数による決定が必要です。また、資本金を減少させる場合には、株式会社と同様に債権者保護手続きが求められます。
債権者保護手続きの必要性
- 資本金の減少 → 債権者保護手続きが必要
- 資本剰余金の減少 → 債権者保護手続きは不要
債権者保護手続きとは、会社の財務基盤が急激に縮小することで債権者に不利益が生じるのを防ぐための手続きです。具体的には、以下の手順を踏む必要があります。
- 官報公告(または定款で定めた公告方法)
- 知れている債権者への通知(必要に応じて)
- 一定期間(通常1か月以上)の異議申し立て期間を設ける
合同会社では、株式会社と異なり、減資の公告の前提として直近の決算公告は不要です。
定款の公告方法 | 公告媒体 | 知れている債権者への通知 |
官報公告 | 官報 | 必要 |
日刊紙公告 | 官報 | 省略可能 |
電子公告 | 官報 | 省略可能 |
減資のメリットとデメリット
メリット
- 資本金額を適正化し、財務状況を整理できる。
- 出資者への払い戻しが可能になり、資本構成を柔軟に調整できる。
デメリット
- 債権者保護手続きが必要な場合、時間とコストがかかる。
- 資本金の減少により、信用力が低下する可能性がある。
合同会社と株式会社の減資手続きの違い
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
資本準備金の減少 | 不可能 | 必要な場合あり |
債権者保護手続き | 資本金減少時に必要 | 基本的に必要 |
決算公告の要否 | 不要 | 必要 |
合同会社における減資は、損失補填、出資の払い戻し、持分の払い戻しの3つのケースに限られます。また、資本金の減少には債権者保護手続きが必要であり、時間と手間がかかるため、資本金の設定は慎重に行うべきです。減資を検討する際には、資本金の適正な水準や、対外的な信用力の維持を考慮しながら判断することが重要です。
当事務所では、合同会社の減資について、登記・税務の両面からサポートが可能です。お気軽にご相談ください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。