Last Updated on 2025年2月10日 by 渋田貴正

自己株式の消却とは?

株主から会社が買い取った(あるいはまれに贈与を受けた)株式は、「自己株式」と呼ばれます。この自己株式を他者に売却するなどして譲渡することなく、株式を消滅させることを「自己株式の消却」といいます。

自己株式の消却は発行した株式が消滅するだけなので、お金が動くことなく、会社の貸借対照表の数字上の動きだけで、会社が発行している株式がなくなるということです。

自己株式の消却の目的

中小企業などで自己株式化した株を他者が買い取ってくれる見込みがなかったり、社長が会社から購入するといったこともやりたくなかったりということで、何とか自己株式をなくして決算書をすっきりさせたいという点が自己株式の消却の目的になります。

 自己株式の消却の目的  説明
 経営者が持株比率を上げるため  自己株式の消却によって、経営者や大手株主の比率が自動的に増加します。
 資本構成を印象良くするため  自己株式を消却することで、資本金を減らさずに資本構成を改善できます。
 予備不要な自己株式を消し消すため  経営方針が変わり、自己株式を保有する必要がなくなった場合に消却が行われます。

自己株式は、貸借対照表上は、「自己株式」という科目で、純資産の部にマイナスで表示されます。自己株式を消却することで、この自己株式は、「その他資本剰余金(計上がなければその他利益剰余金)」と相殺することで、決算書から消えることになります。こうして決算書はスッキリすることになります。

仕訳例)取得原価 1,000,000円自己株式を消却する場合(資本剰余金が100万円以上ある場合)

(借方) 資本剰余金 1,000,000円 (貸方) 自己株式 1,000,000円
自己株式の消却に関する登記

自己株式を消却しても資本金の金額に変化はありませんので、資本金の変更の登記は必要ありません。自己株式を消却することで変わるのは、「発行済株式総数」です。会社が持っていた自社の株式が消滅するわけなので、それまでに発行してきた株式の総数は減少します。そのため、発行済株式総数の減少の登記が必要となります。

自己株式の消却は、取締役の決定(取締役会があれば取締役会の決議)だけで可能です。会社が株主から自己株式を取得した時点で株主に金銭を交付しているわけなので、その後会社が持っている自己株式を消却しても株主にはデメリットはないということで、株主総会は必要とさせていません。

ちなみに、自己株式を消却しても「発行可能株式総数」については自動で変わることはありません。あくまで世に出回っている発行済株式総数が減少のみなので、発行可能株式総数も同時に変更させたい場合には、別途株主総会の決議が必要となります。