Last Updated on 2025年2月22日 by 渋田貴正

合同会社の持分の払い戻しの計算

合同会社(LLC)では、出資割合に応じて社員(出資者)が会社の利益を受け取る権利を持ちます。そのため、社員が退社する際には、持分の払い戻しが必要となります。この持分とは、出資額(資本金+資本剰余金)に加え、会社の利益剰余金の一部を含めたものです。

また、会社法では、払い戻しの際には会社の資産を時価評価しなければならない場合があるため、適切な算定が求められます。特に、持分払い戻しの額が大きい場合には、会社の財務状況や税務処理にも影響を与えるため、慎重に手続きを進める必要があります。

しかし、払い戻しの計算方法や、会社の資産に応じた評価方法について正しく理解していないと、後々トラブルにつながることもあります。

持分を払い戻す際には、まずはそれぞれの社員の持分を計算する必要があります。

AとBの2名で合同会社を設立し、出資額が以下の通りであるとします。

  • Aの出資額(資本金+資本剰余金)=200万円
  • Bの出資額(資本金+資本剰余金)=100万円

この場合、出資比率は A:B=2:1 となります。

また、Bが退社する時点で会社の利益剰余金が450万円あったと仮定すると、

  • Bの取り分 = 450万円 × (1/3) = 150万円
  • Bが受け取る払い戻し総額 = 100万円(出資額)+ 150万円(利益剰余金の持分)= 250万円

※定款に別段の定めをしておけば、払戻額を出資比率以外にすることも可能です。

ちなみに、合同会社では、資本金等は社員ごとに管理しなければいけません。実際に持分を払い戻す際には、個別管理した資本金等を払い戻すことになります。

合同会社の持分の払い戻しで時価評価が必要な場合

合同会社の資産が現預金や売掛金など、額面がそのままの価値を表す資産だけであれば特に上記の計算で問題ありません。ただし、例えば土地や有価証券などの資産を合同会社が保有している場合には注意が必要です。なぜなら、持分の払い戻しについては、資産は時価評価後の数字を用いるということになっているからです。合同会社の持分を譲渡するケースと同じく、合同会社が将来的にも経営を継続する前提で、退社時の価値を測りなおす必要があります。

AとBの2名で合同会社を設立し、出資額が以下の通りであるとします。

  • Aの出資額(資本金+資本剰余金)=200万円
  • Bの出資額(資本金+資本剰余金)=100万円

この場合、出資比率は A:B=2:1 となります。

また、Bが退社する時点で会社の利益剰余金が450万円あったと仮定すると、

  • Bの取り分 = 450万円 × (1/3) = 150万円
  • Bが受け取る払い戻し総額 = 100万円(出資額)+ 150万円(利益剰余金の持分)= 250万円

合同会社は小規模なことも多いため、貸借対照表上の科目も時価評価をすべきものは少ないケースが多いのですが、もし市場価値があるような資産を保有していれば、時価評価をし直す必要があります。

合同会社の持分払い戻し時の会計処理

社員の持分を払い戻す場合、次のような会計処理が行われます。

  1. 資本金および資本剰余金の減少
    • まず、退社する社員にかかる資本金と資本剰余金を減額します。
  2. 利益剰余金の減少
    • 払い戻し額が資本金・資本剰余金を超える場合は、利益剰余金を減額します。

また、持分の払い戻しによって、資本金の減少が発生する場合は「債権者保護手続き」が必要になる場合があります。これは会社法上、会社の資本金を減少させる場合に、一定の公告手続き(官報公告など)が必要とされるためです。

合同会社の持分払い戻し時の税務上の注意点

持分の払い戻しが「みなし配当」として税務上の課税対象となる場合があります。

  • みなし配当とは?
    • 退社する社員が受け取る持分払い戻しのうち、利益剰余金に相当する部分が配当とみなされ、所得税の課税対象となることを指します。
    • 会社側では、支払調書を作成し、税務署に提出する必要があります。

また、退社後の確定申告で、譲渡所得または配当所得として申告が必要になる可能性もあるため、税理士などの専門家と相談しながら手続きを進めることをおすすめします。

当事務所は、税理士と司法書士のダブルライセンスで持分の払い戻しに関する税務・法務のご相談を承っております。持分の計算や税務処理、法的手続きを安心して進めたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。