分配可能額が関係するイベント
会社設立をする際には、株主兼代表取締役の会社が多いですが、この場合に、代表取締役が会社の口座から手元にお金を戻せる方法として、主に以下の3つが考えられます。
1)役員報酬の手取り額
2)立て替えた経費の精算
3)配当
代表取締役や知人同士が株主であれば1)と2)であることが通常です。配当は会社からお金は出ていきますが経費にはなりませんし、受け取った株主には20.42%の所得税がかかってくるからです。(上場していない会社からの配当については住民税は課税されません)あえて配当を出すよりは役員報酬を増額したほうが税金上有利なケースがほとんどです。
ただし、もし外部株主から出資を受けることがあれば、配当ということも考えていくことも必要になってくるケースがあります。配当を出す場合に必ず考慮しなければならないのが「分配可能額」です。
分配可能額の範囲内で行わなければならない手続きとして、以下の手続きがあります。
1)剰余金の配当
2)自己株式の取得
3)株式買い取り請求権に基づく株式の買取り
上記の手続きを行う場合には、「その効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。」と会社法で定められています。
剰余金の配当の要件
株式会社で剰余金の配当を行うには、分配可能額による制約のほかに、以下の要件を満たしている必要があります。
1)純資産の額が300万円以上あること
2)減少する剰余金の額の1/10を資本準備金または利益準備金として計上すること。(ただし、資本金の額の1/4に達するまで行えばよい)
減少する剰余金 | 計上すべき準備金 |
その他資本剰余金 | 資本準備金 |
その他利益剰余金 | 利益準備金 |
分配可能額の計算
分配可能額の計算は複雑ですが、中小企業においては、以下の数式で理解しておけばよいでしょう。
分配可能額=(その他資本剰余金+その他利益剰余金-期中の剰余金の配当額)-自己株式の帳簿価額
分配可能額の計算における剰余金の額は、直近で事業年度の決算書(株主総会や取締役会の承認をうけたもの)の数字を使います。そのほかの分配可能額から加減算していく項目については、事業年度中に変動していきます。
分配可能額の範囲内であれば、剰余金の配当はいつでも行うことができます。ただし、剰余金の配当を行うごとに、分配可能額は減っていくことになります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている