Last Updated on 2025年3月5日 by 渋田貴正
自己株式の取得
株式会社自体が、株主から株式を取得することを自己株式の取得といいます。自己株式の取得には、取得条項付株式の取得や、譲渡制限株式の譲渡不承認による取得など会社法上の規定による取得もありますが、中小企業において最も多いのは、株主との合意による取得です。
例えば、一緒に経営してきた者が退職するために持っていた株式を買い取るケースなどが考えられます。こうした場合は、個人で買い取る場合と会社が買い取る場合がありますが、金額的に個人で買い取ることが難しかったり、他の株主との関係から会社が買い取ったほうがよかったりということで、会社が自己株式の取得を行うことがあります。
また、もともと一定の条件が発生すれば会社が株式を買い取るといった株主間契約を締結している場合もありますので、その規定によって会社による自己株式の取得を行うということもあります。
自己株式を取得する場合には登記は必要?
自己株式を取得しても、発行済み株式総数が減少するわけではないため、登記の変更は不要です。ただし、取得した自己株式を「消却(会社が保有する自己株式を無効化すること)」すると、その分発行済み株式総数が減少するため、登記の変更が必要になります。
自己株式の取得をする場合の財源規制
会社が自己株式を取得する場合、「分配可能額」の範囲内で取得しなければなりません。「分配可能額」とは、簡単に言うと「会社が自由に株主に分配できる利益の額」です。
なぜこのような規制があるのかというと、自己株式の取得は「会社財産を株主に交付する」という点で、実質的には配当と同じだからです。そのため、過剰な株式取得により会社の財務状況が悪化しないよう、会社法では「分配可能額を超えて自己株式の取得をしてはいけない」という制限を設けています。
特定の株主との合意により自己株式を買い取る場合のポイント
株主が複数名いる場合に、特定の株主から自己株式を買い取る場合には、株主総会の特別決議が必要です。この場合、株主全員に平等な売却機会を与えるために、株主全員に対して、自己を株主に加えることを議案にするように請求することができます(売主追加請求権)。Aさんから株式を買い取ろうとしたときに、別の株主であるBさんも同額で買い取ってほしければ、Bさんからその旨も株主総会の議案に入れるように請求できるということです。ちなみに、自己株式を買い取る場合の株主総会の特別決議において、買い取ってもらう株主は議決権を行使することができません。
ただし、特に中小企業では、特定の株主からのみ買い取りを行いたいというケースもあります。その際に、他の株主からも買い取りを行うことが生じると当初の自己株式の買い取り計画も狂ってきてしまいます。そこで、定款に定めることで、他の株主に売主追加請求権を与えないということも可能です。
第〇条(自己株式の取得)
当会社は株主総会の決議により特定の株主からその有する株式の全部又は一部を取得することができる。 |
ただし、この規定は株主の投資回収の機会を一つ奪うことになりますので、もしこの定めを設ける場合や変更する場合には、株主全員の同意が必要となります。削除するなら、単なる定款変更なので、特別決議で可能です。
また自己株式を買い取る際の買い取り代金の設定も重要です。特に、買い取り代金次第で株主にムダな税金を払わせてしまうことがありますので、注意する必要があります。
買い取り価格が不当に高い場合 |
税務署から「株主への利益供与」とみなされ、贈与税の対象となる可能性 |
買い取り価格が不当に安い場合 |
売却した株主に「みなし贈与」が発生するリスク |
自己株式の取得は、会社の資本政策や事業承継にも関わる重要な手続きです。適切な手続きを踏まないと、税務リスクや他の株主とのトラブルを引き起こす可能性があります。
「うちの会社も自己株式を取得したほうがいいの?」「適正な買い取り価格の設定は?」といった疑問がある方は、専門家に相談するのがベストです。
当事務所では、自己株式取得の手続きから税務面のアドバイスまで、総合的にサポートしております。適正な価格設定や法的手続きを確実に行いたい場合は、お気軽にご相談ください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。