Last Updated on 2025年2月28日 by 渋田貴正

監査役の2種類の監査範囲

監査役の業務範囲は、大きく分けて「業務監査」と「会計監査」の2点があります。

業務監査とは取締役やその委任を受けて業務を行う者の業務が法令などに違反していないかということについて適否を判断すること、会計監査とは、それらの業務が会計基準などの会計的なルールに違反していないかということについて適否を判断することです。

業務監査 会計監査
取締役や業務執行者の行動 会社の財務・会計処理
法令や定款に違反していないかを監査 財務諸表や会計処理が適正かを監査
法令・定款違反、不正行為、業務の適正性 会計基準の適用、財務諸表の正確性、会計処理の適法性
会社法・定款・各種ガイドライン 会計基準(日本基準・国際会計基準など)
取締役の業務執行の監視、取締役の責任追及が可能 財務諸表の適正性に関する意見表明、誤りの指摘
業務全般に影響(会社の経営方針・コンプライアンス) 財務報告に影響(投資家や株主への信頼性)

このうち、非公開会社では、監査役の業務範囲を会計監査に限定することができます。この場合、「監査役」という肩書がある役員が存在していても、その会社は会社法上の「監査役設置会社」には該当しません。

監査範囲が会計に限定された場合の監査役の権限

監査役の監査範囲が会計に関するものに限定されている場合、監査役は、以下の義務や権利を持ちません。
1)取締役が不正行為などを行った場合の取締役会への報告義務
2)取締役会への出席義務
3)株主総会への監査報告義務
4)取締役の行為の差し止め請求権
5)取締役との間の訴えにおける会社の代表
6)取締役等による役員の責任免除の対象になることができない

このため、会計監査に限定された監査役の職務としては、

  • 決算書などの会計書類が適切に処理されているか監査すること
  • 監査報告書を作成すること
  • 株主総会の議案のうち、会計に関する議案を調査し、その結果を報告すること

といった役割に絞られます。

取締役会設置会社における監査役の取り扱い

取締役会を設置している会社(取締役が3名以上いる会社)は、原則として監査役の設置が義務付けられています。しかし、非公開会社であれば、取締役会が設置されていたとしても監査役の監査範囲を会計に限定することが可能です。

そのため、取締役会設置会社の非公開会社では、監査役を会計監査に限定し、取締役の業務監査を不要とすることもできるということになります。

監査役の監査範囲を限定した場合の登記

監査役の監査範囲を会計に限定する場合は、その旨を登記することが必要です。

登記上は、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」と記録されます。

また、この場合でも、登記上は「監査役設置会社」として記載されます。しかし、会社法上の監査役設置会社には該当しないため、監査役設置会社に適用される規定(取締役会への出席義務など)は適用されません。

登記上、「監査役設置会社」と記録されていても、併せて「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」と登記されていれば、会社法上、監査役設置会社に適用される規定は適用されません。ややこしいですが、登記記録から判断することになります。

監査役の監査範囲を会計に限定することで、業務監査の負担を軽減しつつ、最低限の会計監査を確保することができます。ただし、監査役の権限が制限されることにより、不正を防ぐためのチェック機能が弱まる可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

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