Last Updated on 2025年4月1日 by 渋田貴正
相続放棄申述受理証明書とは
相続放棄が完了したあとは、どこかに公表されるわけでもなく、もし相続放棄が完了したことを確認したい場合は 自ら書類を取得する必要があります。
相続放棄の手続きが完了したことを自ら証明したい場合は、「相続放棄申述受理証明書」を相続放棄の審判を行った家庭裁判所から取り寄せます。相続放棄を行った相続人自身には、似たような名前の「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。相続放棄申述受理通知書で登記や口座解約など各種相続手続きを行うことも可能です。しかし、相続放棄を行った本人から書類を受領することは困難なケースも多いため、一般的には相続放棄申述受理証明書で各種相続手続きを進めることになります。
項目 | 相続放棄申述受理通知書 | 相続放棄申述受理証明書 |
---|---|---|
発行対象 | 相続放棄をした本人にのみ送付 | 相続放棄の利害関係人が申請して取得 |
発行手続き | 家庭裁判所から自動送付 | 家庭裁判所に申請が必要 |
用途 | 本人による証明用(他人が使うことは想定されていない) 登記・口座解約など各種手続きに使用される |
利害関係人の確認用 登記・口座解約など各種手続きに使用される |
再発行 | 原則として不可(紛失時など) | 何度でも申請・取得可能 |
利害関係人が使えるか | 不可 | 可(要・利害関係証明) |
相続放棄申述受理証明書の取得方法
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の審判を行った家庭裁判所、つまり亡くなった被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。申請書のフォーマットは家庭裁判所のサイトからダウンロードできるほか、家庭裁判所の窓口でも入手できます。
申請書には以下の書類を添付することが必要です。
1)申請者の住民票(本籍地が記載されているもの)
2)被相続人と申請者の利害関係を証する書類(放棄をした相続人以外が申請する場合)
3)郵送の場合は返信用切手を貼った返信用封筒
この中で、相続放棄申述受理証明書の交付を受けるうえで最も重要なのが、2)の利害関係を証する書類です。利害関係を証する書類としては以下のようなものがあります。
利害関係者の立場 | 利害関係を証する書類の内容 |
---|---|
相続人となった兄弟姉妹 | ・被相続人との兄弟姉妹関係を示す戸籍謄本 ・両親が既に死亡していることがわかる戸籍謄本 |
債権者(被相続人にお金を貸していた) | ・金銭消費貸借契約書など、債権が存在することを示す書類 |
相続分の譲渡を受けた第三者 | ・相続分譲渡証書のコピー ・譲渡した相続人の印鑑証明書のコピー |
利害関係を証する書類を揃えることが難しそうであれば、相続放棄をした相続人本人に依頼して、相続放棄申述受理証明書を取り寄せてもらうといった対応も必要になるかもしれません。
窓口に各種書類を持参することも可能ですが、書類がそろっていたとしても、その場で交付を受けられるわけではありません。書類をもとに交付の可否について家庭裁判所内で判断してからの交付となるので、いずれのケースでも数日間は交付までに要します。
事件番号が分からない場合
相続放棄申述受理証明書には、事件番号の記載が必要です。事件番号とは、家庭裁判所で振られる各事案ごとの番号です。もし事件番号が分からなければ、相続放棄申述受理証明書の交付の前段階として、相続放棄の有無の照会を行います。
相続放棄の有無の照会に必要な書類は、基本的に相続放棄申述受理証明書の交付申請と同じですが、申請書の様式が異なりますので、家庭裁判所のサイトで確認しておきましょう。
相続放棄の有無の照会を行った後に、相続放棄申述受理証明書の交付を受ける場合には、1年以内であれば利害関係を証する書類など一度提出した書類の再提出は不要となります(※家庭裁判所によって若干の運用の違いがありますので、事前に確認されることをおすすめします)。
令和5年以降、各家庭裁判所の運用にも若干の違いが出てきており、一部の裁判所では、オンライン申請による手続きにも徐々に対応し始めています。もっとも、現時点では相続放棄申述受理証明書に関しては郵送または窓口での紙面による申請が主流であるため、事前に該当する裁判所のホームページで最新情報を確認することをおすすめします。また、書類不備による差し戻しも少なくありませんので、慎重に書類を準備しましょう。
相続放棄が関係する相続手続きは、他の相続人や利害関係者の確認や証明が必要となるケースが多く、一般の方には分かりにくい部分も多々あります。当事務所では、相続放棄後の手続きや証明書の取得支援など、実務に即したアドバイスとサポートをご提供しています。「これってどうしたらいいの?」と迷われたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。