遺贈の登記の単独申請

不動産登記法の改正により、従来は遺言執行者と遺贈をうける者(受遺者)の共同申請によって申請しなければいけなかった遺贈の登記について、受遺者が相続人である場合は、単独で申請できるようになります。この取り扱いは、令和3年4月に可決した不動産登記法が施行されてから有効となります。相続登記が義務化されることや、所有者不明不動産の発生予防の観点から、相続人への遺贈の登記手続きを簡略化することが、狙いの改正です。

不動産登記法
第63条3項 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

かっこ書きの通り、受遺者が相続人の一人でなければ、従来通り遺贈の登記を申請するには、遺言執行者と受遺者の共同申請によることが必要です。相続人の関与なく被相続人の不動産の登記申請ができるとなると、遺贈が本当に被相続人の意思によるものなのかといったことなどについて裏付けがないまま登記が行われる可能性があるためです。

単独申請による場合の遺贈の登記

遺贈の登記を、受遺者である相続人の単独申請による場合は、遺言書を登記原因証明情報として提出します。相続人が登記申請にあたって遺言書を法務局に提出することで、登記の真正性を保っているということです。

ただし、共同申請時に必要だった遺言執行者の印鑑証明書や登記書類への実印の押印が不要になります。これは、特定財産承継遺言による相続登記の単独申請と同じ扱いになるということです。単独申請が可能になることで、受遺者である相続人が一人で登記申請できるようになるため、遺贈による相続手続きも大きく簡素化されることになります。

あとは、受遺者である相続人と被相続人の関係が分かる戸籍も登記申請時に添付が必要です。例えば配偶者のように、一つの戸籍で関係が証明できるような場合は、その戸籍だけを添付すれば大丈夫です。被相続人の出生からの戸籍までは必要ありません。

まとめると、相続人が受遺者の場合の、遺贈の登記の単独申請で必要な書類は以下の通りです。
1)遺言書(自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による遺言の検認済みのもの)
2)被相続人と受遺者である相続人の関係が分かる戸籍
3)受遺者である相続人の住民票
4)被相続人の登記上の住所と最後の住所のつながりが分かる書類(住民票の除票や戸籍の附票など)

他の相続人から書類を受け取る必要がないため、共同申請の場合に比べて、非常に手続きは簡素になります。

ただし、あくまで登記原因は「遺贈」なので、登録免許税などは、遺贈の登記のものが適用されることに注意しましょう。

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