Last Updated on 2024年12月30日 by 渋田貴正
合同会社の社員の任意退社
社員の退社というと、家に帰ることや退職をイメージしますが、合同会社の社員の退社といえば、出資者が一人抜けることを意味します。そのため、単純に退職届を出すだけではなく、さまざまな手続きが必要となります。持分の払い戻しを伴うのであれば減資の手続きが必要になりますし、業務執行社員であればその退社の登記も必要になります。
そのため、合同会社の社員はいつでも退社が認められるわけではありません。合同会社の社員が任意に退社する場合には、原則として以下の要件を満たす必要があります。
1)事業年度の終了時であること
2)6か月前までに退社の予告をすること
6か月もの長い期間を予告期間で定められているのは、社員の退社によって合同会社には持分の払い戻しを行う必要があり、会社にとって大きな影響を及ぼす恐れがあるためです。また、払い戻す持分の計算にあたって確定した貸借対照表を使用するために、「事業年度の終了時」という規定が設けられています。
例えば、12月末決算の合同会社であれば、6月30日までには退社の予告が必要ということになります。
ただし、定款でこの6か月という期間を伸ばしたり縮めたり、ということも可能です。会社の規模によっては6か月もの期間退社を制限する必要がないということもあるでしょうから予告期間を例えば3か月に短縮するといったことや、逆に経営の安定のために9か月に伸ばすといったことが、定款に定めれば可能です。
やむを得ない事由がある場合の任意退社
会社法上、上記の任意退社の要件を満たさなくても、やむを得ない事由があれば、社員はいつでも退社できると定められています。それでは、どのようなケースが「やむを得ない事由」に該当するのでしょうか?
社員が退社するということは、会社運営という実務面だけでなく持分の払い戻しによる資金面で会社に大きな影響を及ぼします。そのため、社員の個人的な事情、例えば転職などではなく、病気でもう経営にタッチできないなどの事情が必要になってくると考えられます。
ただし、以下で説明する法定退社の事由の一つに「総社員の同意」があります。やむを得ない事由があるくらいなら総社員の同意も得られると考えられるので、「やむを得ない事由」を検討するよりも法定退社として扱ったほうがスムーズかもしれません。
合同会社の社員の法定退社
上記は、社員が自ら退社する場合ですが、以下のようなケースでは、社員の意思に関わらず退社することになります。これを法定退社事由といいます。法定退社事由としては、以下の8つがあります。これらを満たした場合は、本人の意思に関わらず退社することになります。最も多いケースは「二 総社員の同意」です。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと
八 除名
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている