Last Updated on 2023年1月31日 by 渋田貴正
相続人の廃除とは?
推定相続人の廃除とは、被相続人の意思で、相続人になるべき者について相続権をはく奪する制度です。「排除」ではなく「廃除」です。もうこの「廃除」という言葉は相続でしか出てきませんので、つい「排除」と書きそうになりますが、お間違いなきよう。
相続欠格は、決められた事由に該当すれば当然に相続権を失うのに対して、廃除は被相続人の意思が介在する点や具体的な事由が細かく定められていない点で異なります。
廃除の対象となる相続人
廃除できるのは、遺留分を有する相続人、つまり配偶者、子やその代襲相続人、直系尊属です。遺留分を有しない兄弟姉妹やその代襲者については、遺言でその者以外の者に遺産を遺贈などすることで対応できるため、廃除の対象になっていません。
また、対象となるのは先順位の相続人だけです。例えば、子がいるのに、あらかじめ父母を廃除するといったことはできません。子がいる時点で父母は相続人ではないからです。
廃除できる事由とは?
民法では廃除の事由について、以下のように定められています。
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。 |
廃除の事由に該当するかどうかについては、最終的に家庭裁判所の判断にゆだねられることになります。親族のとして関係が破壊されているかどうかといった点が一つの基準になりますが、推定相続人の相続権を奪うほどの強力な制度なので、それなりの事情が必要です。
廃除の方法
廃除は家庭裁判所に請求することで行います。その方法には、被相続人自らが行う「生前廃除」と、被相続人の死後、遺言によって行う「遺言廃除」があります。遺言廃除の場合は、遺言執行者が手続きを行います。遺言執行者が遺言で指定されていなければ、まずは廃除の対象となっていない相続人などの利害関係者から家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任の申し立てが必要です。
廃除については、被相続人だけが行うことができます。どれだけ被相続人に対して、廃除に値する行為を行う推定相続人がいたとしても、他の相続人が代理で廃除の申し立てを行うといったことは認められません。一方、廃除の対象となる推定相続人が未成年の場合は特別代理人の選任が必要となります。
廃除の審判が確定すると、その時点で廃除の効力が発生して、推定相続人は相続の資格を失います。廃除が確定すると、その旨が戸籍に記載されます。
廃除の取り消し
一旦確定した廃除は、家庭裁判所に請求することで取り消すことができます。廃除の取り消しについては、その理由は問われません。本来持っていた相続権を回復するだけなので、あるべき状態に戻るだけだからです。家庭裁判所としては、本人の意思で取り消すかどうかの確認だけを行います。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。