現物出資とは?
仮想通貨を保有する人も増えてきました。税務上などでは「暗号資産」と呼ばれますが、一般的に仮想通貨という言葉で浸透していますので、以下でも仮想通貨と呼びます。
仮想通貨の浸透とともに、仮想通貨を現物出資できるのかという問い合わせも増えてきましたので、情報を整理しておきます。
まずは、そもそも現物出資とは何かということについて考えてみます。現物出資とは、金銭の払い込みに代えて、財産を会社に出資して、その対価として株式の交付(合同会社の場合は持分)を受けることです。
現物出資の目的は、車やパソコン、店舗内装などの動産や、建物や土地などの不動産、株式、知的財産権などが挙げられます。また、現物出資は現金の代わりに財産を出資するので、その対象物は金銭換算したときの価額が、ある程度明確に計算できるものである必要があります。
仮想通貨の現物出資はできない
それでは、仮想通貨の現物出資はどうでしょうか。仮想通貨も仮想通貨市場で売買しているため、その価値としてはレートを見れば判断できるように思えます。
しかし、実際には、仮想通貨は投機的な意味合いが強く、市場でのレートといっても、それが仮想通貨の本当の価値を表しているとはいえませんし、価格変動も大きく、とある日の取引価格を仮想通貨の時価として認めるいうことはできません。
結論は、仮想通貨は現物出資には適さない、ということがいえます。仮想通貨を現物出資の目的として申請しても、登記申請は通らないでしょう。
仮想通貨を法人で保有すること自体は可能
しかし、現物出資できないからといって、個人で保有している仮想通貨を法人に移せないかといえばそういうわけではありません。法人で仮想通貨を保有すること自体は禁止されているわけではないので、現物出資ができなくても、法人の仮想通貨の口座を開設して、そこに個人で保有している仮想通貨を移管することはできます。
ただし、この場合は、無償で法人に仮想通貨を移管すればその分が受贈益として法人側に課税が行われます。
また、代金をやり取りすれば、仮想通貨を個人から法人に売却した扱いになるので、個人側で利益を確定して確定申告が必要になることに注意しましょう。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている