Last Updated on 2025年1月1日 by 渋田貴正
支店とは?営業所との違いは?
支店とは一般的に、本社以外の事務所や店舗などのことを指しますが、会社の登記上は、「支店」といえば、登記された支店をいいます。
この商業登記上の支店は、本店とは別に営業活動を行って、対外的な取引でも独立して意思決定できるといった事業所を支店といいます。
一方、営業所は支店ほど独立した活動を行っているわけではない事業所をいいます。つまり本店所属の営業所もあれば支店所属の営業所もあるということです。○○支店と言われている場所でも決裁権限は本社にあるというケースでは会社法上の定義の「支店」には該当せず
この定義から言えば、例えば飲食店が2店舗目をオープンしたといったようなケースでは、登記上の「支店」には該当しないということになります。
定義から考えると、支店登記すべきかどうか迷うこともあるかもしれません。実際のところは、支店登記は現実的な問題に直面して行われるケースが多いかもしれません。
例えば、本店登記したところとは別に店舗をオープンして、店舗がある地域の金融機関で口座開設をしたり、融資を受けたりしようとする場合には、その金融機関が管轄する地域内に支店登記をするよう求められることがあります。
また、本店とは別の都道府県で許認可を得ようとする場合でも、その都道府県内に支店登記を行うことを求められることがあります。
このように支店登記を行うのは、特に中小企業においては必要に迫られて、というケースがほとんどです。
ただし、支店はあくまで独立の事業所としての扱いです。支店ではない営業所であっても、その場で事業を行っていることには変わりありません。そのため、支店登記していない営業所でも、法人住民税の納税義務などは発生します。
支店の設置を決定する機関
取締役会設置会社の場合は取締役会の決議、取締役会がなければ取締役の過半数の一致によって支店の設置(その他支店の移転や廃止)を決議します。
ちなみに、「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」は個別の取締役に委任できず、取締役会の決議が必須になります。
支店の設置にかかる費用
2022年9月1日から、支店を設置した場合や支店の移転、廃止など支店の所在地における登記が廃止されました。
廃止される前は、本店の所在地で支店の登記を行ったうえで、支店の所在地でも支店設置や移転、廃止などの 登記が必要でした。しかし、この支店関係の登記は本店所在地でも内容が確認できるため、あえて支店所在地でも登記をする必要があるのかという疑問がありました。
もともと登記記録が電子化される前であれば、支店の状況を確認するのに支店所在地の法務局で登記記録を確認することによるメリットがあったかもしれません。しかし、今や登記記録はすべて電子化されています。支店のことは本店所在地での登記事項証明書を取得すれば確認できますし、さらに支店に支配人を設置していても本店所在地での登記記録にしか記録できないことを考えると、あえて支店の登記記録を取得するよりも本店での登記記録を取得しておけば十分です。「大は小を兼ねる」ということでしょうか。
支店所在地での登記には1回につき9,000円の登録免許税がかかるということもあり、今回の廃止によって、支店を設置した場合のコストや手間が少なくなるということになります。
本店所在地での支店関係の登記は変わらず必要
支店所在地での支店登記が廃止になったため、支店について確認できるのは本店所在地での登記記録のみとなります。そのため、従来と変わらず本店所在地での支店登記は必要となります。
支店関係の登記には、以下の3パターンがあります。
登記の種類 | 登録免許税 |
支店設置の登記 | 6万円 |
支店移転の登記 | 3万円 |
支店廃止の登記 | 3万円 |
ちなみに、支店に支配人を設置した場合でも支店登記の区分に支配人は登記されません。支配人を設置した支店の住所は支配人の区分に記録されることになります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている