Last Updated on 2024年12月31日 by 渋田貴正
取締役の役員報酬の総枠決定方式
会社設立時の役員報酬は、会社の利益や社会保険料などに絡む重要な決め事です。そんな役員報酬は金額には目が行きがちですが、会社によっては決め方にも注意しておいたほうが良いことがあります。
役員報酬の決め方として最も会社にとって運用しやすいのが総額枠決定方式です。これは、定款で役員報酬の上限だけを定めて、具体的な個別の金額については役員が決定するという方式です。
なぜ運用しやすいかといえば、定款で上限を決めておけば、その上限の変更がない限りは、個別の役員報酬については取締役会(取締役会がなければ取締役の過半数の決定)で毎期の報酬を決められるので、定時株主総会の議案に役員報酬のことを盛り込む必要がなくなります。
この総額枠方式は、定款上以下のように記載します。
(取締役の報酬等)
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この例では年額で決めていますが、月額で決めることも可能です。いずれにしても、個別の金額を決めなくても、総額を決めておくだけでも役員報酬のお手盛りを回避することができるためです。ただし、定款で上限を定めずに、金額の決定を取締役(会)に一任することはできません。
総額枠方式のときの役員報酬の決定機関
総額枠方式の際の役員報酬の決定機関は取締役会、取締役会がなければ取締役の過半数の決定で行います。
細かい話ですが、取締役自身の役員報酬を決める決議なので、その取締役は、いわゆる特別利害関係人となり決議に参加できないのではという疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特定の取締役ではなく、取締役全体についての決議であり、報酬の決定される取締役が参加したとしても決議が不公正になるというわけでもないので、特別利害関係人には該当しないということになります。
また、取締役(会)は、報酬の決定について代表取締役に再委任することも可能です。この場合は、代表取締役の一存ですべての取締役の役員報酬を定めることになります。この委任は、毎期行う必要はなく、一度委任すれば、毎期の役員報酬の決定について有効になります。これは取締役の構成が変動したとしても同じ話です。
監査役の役員報酬の総枠決定方式
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監査役については、上記の条文で役員報酬の決定方法が定められています。見ての通りで、総額枠方式の場合は監査役の協議で定めるということになっています。監査役の報酬を取締役が定めることになれば、監査役の独立性が損なわれてしまうからです。
この趣旨からして、監査役がさらに取締役や代表取締役に報酬決定を再委任することもできないということになります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている