「本文」と「ただし書き」の違い
今回は、法律の条文について特殊な用語の使い方を見てみます。相続と直接関係ありませんし、法律家でもなければ気にするところではないかもしれませんが余談程度に書いておきます。
法律では、よくただし書きというものを目にします。例えば以下のような場合です。
(遺産の分割の協議又は審判等)
民法 第907条
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
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2項目に「ただし」という言葉が出てきます。そして、3項目に「前項本文」という言葉が出てきます。実は、2項は「遺産の分割~請求することができる」の部分と「ただし、~この限りでない。」という2つの条文で構成されています。そして。前項本文というのは「ただし」の前の部分の「遺産の分割~請求することができる」を指します。「ただし」という言葉が出てきたら、本来2つの項に分ける条文を、分かりやすいように一つの条文でまとめていると考えましょう。
「前項本文」というのがどこの部分を指しているのかが分からないと、条文を読み違えてしまうことも考えられます。言葉的に前項すべてが「本文」と呼んでしまうこともあり得ます。前項すべてが本文ととらえてしまうと、法律の条文の意味を大きく勘違いしてしまうことも考えられます。「前項本文」という言葉が条文に出てきたら、「ただし」の前の部分までだと思っておけばよいでしょう。
ちなみに、「ただし」より後の部分を後の条文で受ける場合には、「第〇条ただし書」という言葉が使われます。例えば以下のような場合です。この場合は、「本文」は無視して、「ただし書」の部分だけを受けていると考えてください。
(保佐人の同意を要する行為等)
民法 第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
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法律には、独特の言葉使いがあります。相続関係の条文でも一部用いられる表現ですので、ここでまとめておきました。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている