Last Updated on 2024年12月31日 by 渋田貴正
顧問弁護士も監査役への就任が可能
監査役の選任が必要になるケース、例えば取締役会を設置しようとして監査役を1名選任しようといったケースでは、まずは監査役の候補を探すことから始めなければいけません。特に中小企業では、だれを監査役にするかという候補者選びから大変かもしれません。
そこで、顧問弁護士に監査役に就任してもらうといったことが可能かどうかといったことを考えてみます。
そもそも、監査役については、「株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与」を兼務できないということになっています。まずは顧問弁護士がこれらに該当しているかどうかということですが、弁護士の顧問契約を結んでいるということをもって、使用人には該当しないと考えられます。ただし、大手企業で社内弁護士を抱えているような場合は例外的に使用人に該当するでしょう。中小企業のように、毎月顧問料を支払って顧問契約している弁護士であれば、監査役に就任することも可能です。
顧問弁護士であれば、場合によっては会社が訴訟その他の紛争について会社側の代理人になることもあります。顧問弁護士が監査役に就任したとして、紛争が起こったときに会社側の代理人弁護士として動くことはできるのかという問題があります。会社側の代理人ということは、会社の業務執行を担うということになります。こうなると会社の業務執行の監査を行う監査役が、自己が監査すべき業務執行を自己で行ってしまうということになります。しかし、弁護士がその資格に基づいて受任した業務について訴訟などの代理を行うことについては、それだけで会社の業務を執行しているとはいえない、つまり監査役である顧問弁護士が会社側の訴訟などの代理人に就任することは問題ないということになっています。
顧問税理士は就任するなら会計参与
ちなみに、顧問税理士については、監査役ではなく会計参与として就任することが相当です。税理士は会社側に立って税金の計算をするため、顧問税理士が監査役に就任するということは監査役の独立性の面からも不適当です。
すべての株式について譲渡制限株式となっている会社(非公開会社)については、取締役会を設置しようとする際に、監査役の代わりに会計参与を設置してもよいということになっていますので、監査役の候補がいなければ、取締役会を設置・維持するために顧問税理士に会計参与として就任してもらうというのも一つの手かもしれません。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている