Last Updated on 2024年12月31日 by 渋田貴正

取締役ごとに任期を変えることはできる

特に中小企業においては、創業社長とその後に取締役に就任した者の間には大きな立場の差があることが通常です。そのため、創業社長とその他の取締役で役員の任期を変えたいというニーズが出てくるのも当然です。

取締役の任期については、ベーシックな部分については会社法で以下のように定められているだけです。

会社法 第332条
  1. 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
  2. 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

これだけしか定めがないので、取締役ごとに異なる任期を定めることについては特に制限されていません。そのため、定款に定めれば取締役のうち特定の者や一定の要件を満たす者の任期を別に定めることも可能です。

例えば以下のような任期の定め方が考えられます。(2年や10年といった年数は会社によって変えても問題ありません。)

・創業者の人だけを任期10年にして、その他の取締役は任期2年にする

・その会社の株式を保有している取締役だけを任期10年にして、就任時に株式を保有していない取締役の任期を2年にする

取締役ごとに任期を変えるには、会社ごとにその目的があります。その目的を達成するために妥当な内容の任期の定め方をしておけばよいでしょう。

定款の記載の方法については、任期の定め方次第で異なってきますが、以下のような記載が考えられます。

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。ただし、取締役のうち山田 太郎については選任後10年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。

この記載はあくまで一例です。会社が定めたい任期の区分に応じて自由に決めればよいでしょう。

 

重任登記は定款で定めた任期に従って行えば問題ない

重任登記についても定款の定めに基づいて行えば問題ありません。重任の登記はあくまで定款に従って任期を満了した取締役について続投する場合に行うものであり、重任の登記によって効力が発生するわけではありません。重任登記は会社のルールに基づいて重任した取締役についてその事実を公示しているにすぎません。

ただし、役員ごとの異なる任期の定めとは直接関係ありませんが、重任登記を放置しておくとみなし解散の危機がありますので、忘れずに重任の登記を行いましょう。