「直ちに」と「遅滞なく」と「速やかに」の違い

行政に提出する届け出の期限を見ていると、「直ちに」や「速やかに」や「遅滞なく」といった言葉が出てきます。「〇日以内」とか「〇か月以内」といった形であれば分かりやすいのですが、「直ちに」とか「速やかに」とか「遅滞なく」と言われると、いったいいつまでに提出すればよいのだろうと迷ってしまいます。

法律上言葉を使い分けているということは、分ける意味があるということです。ニュアンス的な話になりますが、以下のような違いがあります。

直ちに 事由が発生したら、すぐに行うことを意味します。いかなる理由があっても遅れは許されない、といった意味合いで使われます。
遅滞なく 事由が発生したら、すぐに行うことを意味します。ただし、正当な理由や合理的な理由があれば、多少の遅れは許容されます。
速やかに 可能な限り早く行うことを意味します。「直ちに」や「遅滞なく」ほどの緊急性はなく、心得として用いられます。

このように、時間的に緊急性がある順番としては、

「直ちに」>「遅滞なく」>「速やかに」

の順番になります。意味もなく使い分けているわけではなく、ニュアンスに違いがあるので、しっかりとその意味をとらえておく必要があります。

相続における例

相続においては、それぞれ以下のように用いられています。「速やかに」というのは相続の条文では使われていないので、いずれもすぐにやりなさい、ということになっています。

遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

「遅滞なく」については、「直ちに」よりも頻繁に用いられます。それだけ「直ちに」という言葉を見つけたら、本当にすぐに着手する必要がある強い言葉なのだということを認識しておく必要があります。