Last Updated on 2025年1月1日 by 渋田貴正
会社法では、決算公告について以下のように定められています。
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大会社以外では、広告は貸借対照表のみ開示すればOKということになっています。さらに官報や日刊新聞を公告方法としている場合(第939条第1項第一号又は第二号)には、貸借対照表の要旨だけ公告すればOKということになっています。税務署などに提出する決算書の内容そのものを開示する必要はないということです。
官報や日刊新聞では、1行でも増えると掲載費用が数万円変わります。そのため、中業企業にとって広告費用の負担を抑えることができるように貸借対照表の要旨だけ公告すればよいということになっています。
貸借対照表の要旨というのは、以下のような内容となります。
金額(百万円) | |||
資産の部 | 流動資産 | 100 | |
固定資産 | 100 | ||
合計 | 200 | ||
負債及び 純資産の部 |
流動負債 | 50 | |
固定負債 | 50 | ||
株主資本 | 100 | ||
資本金 | 50 | ||
資本剰余金 | 40 | ||
資本準備金 | 40 | ||
利益剰余金 | 10 | ||
利益準備金 | 0 | ||
その他利益剰余金 | 10 | ||
(うち当期純利益) | 5 | ||
合計 | 200 |
実際に中小企業は決算公告している?
決算公告は、これから会社と取引しようとする企業のための制度です。また、株主や債権者は計算書類の閲覧が会社法上認められているとはいえ、実際に運用されている事例は少なく、株主や債権者にとっても公告には一定の意味を持ち得ます。しかし、実際に上記の内容の公告を見たとしても要旨だけではほぼ会計的な情報は何も入手できていないのと同じです。さらに、官報や日刊新聞への公告では、そもそも公告を捜すことすら困難です。
このように実効性に乏しい中小企業の決算公告ですが、実際には決算公告を行っている中小企業はごくわずかです。会社法上は義務付けられている決算公告ですが、コストがかかる割にはその内容が乏しく決算書を公告したからといって取引先やこれから取引しようとする相手が助かるといったこともありません。(取引開始にあたって中小企業の決算公告を参考にする会社はないでしょう。それなら帝国データバンクなどを活用するはずです。)
決算公告の義務は2006年の会社法施行前の商法時代からありましたが、当時から遵守されているとはいいがたい状況でした。会社法施行時に決算公告義務については廃止も議論されたようですが、そのまま会社法でも引き継がれた形です。
いまではWEBでの決算公告を採用する企業も増えてきました。WEB公告なら官報や日刊新聞に比べればコストは低いとはいえ、それでも数万円程度のコストがかかります。結局は、減資のように決算書の公告を行っていることが前提になる手続きを行う際にセットで決算公告を行うといったことが多いのが実情です。
ちなみに、合同会社などの持分会社や特例有限会社については公告義務は課されていません。持分会社は閉鎖的な会社であり、決算公告を行うことになじみませんし、特例有限会社は旧商法で決算公告の義務が免除されていたためそれを引き継いでいます。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている