Last Updated on 2025年1月1日 by 渋田貴正
事業目的は計上できる経費の幅に関係する?
定款に記載する事業目的は、その名の通りどのような事業を行うのかということを記載するものです。そこで、事業目的の範囲外の行為を行うことについては問題ないのかといったことについて気になることが多いですが、一方で事業目的に記載しておけばその事業を行っているものとして扱ってもらえると考えている人もいるようです。
例えば、事業目的に「ペットのブリーディング」と書いておけばペットのご飯代や病院代などを経費で落とせるといったことです。この考え方の裏には、事業目的に書いておけばプライベートな支出も経費として計上できるだろうという思いがあるのでしょう。
事業目的と税金計算上の経費の範囲は無関係
結論から言えば、このようなことは一切ありません。この考えは税務署を相手として事業目的の記載をもって経費を主張しようという考えですが、そもそも税務署は事業目的などほとんど(一切?)気にしていません。
事業目的は、投資家や金融機関その他の取引先がその会社の概要を知るための情報の一つです。申告された数字から情報を読み取る税務署にとっては登記された事業目的の内容はほとんど気にも留めていません。それよりはホームページやSNS、税務調査時のヒアリングなどをもとに事業の概要を把握しています。
たとえ「飲食店の経営」という事業目的が入っていない会社が飲食店を経営していたとしても税務署は気にしません。税務署が行う調査の目的は、その会社の税金が正しく計算されているかどうかということ、その一点に尽きます。
いくら事業目的を書き並べても、実態としてその事業運営とは無関係な経費だと判断されれば経費として計上することは認めてもらえないでしょう。逆に、事業目的に入っていない事業に関する経費でも、実態としてその事業を会社で行っているのであれば、その事業のための経費は計上しても税法上全く問題ありません。
少なくとも、もし税務調査の際に経費に算入するかどうかという議論になったとき、事業目的の記載をその論拠にすることはできません。あくまで、どのような事業活動のために支出して、その結果どのように事業に活きているのかといったことを説明する必要があります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている