遺留分の放棄とは?
相続というものは、被相続人が亡くなってから初めて手続きが発生するものです。相続人が被相続人の生前に遺産分割協議を行っていた場合たとえ書面に残していたとしても無効ですし、被相続人が存命の間にあらかじめ相続放棄を行うことも認められません。遺言も相続が開始して初めて効力が発生します。
しかし相続に関する手続きの中で生前でも認められている制度があります。それが「遺留分の放棄」です。遺留分の放棄とは、被相続人が生きている間に、推定相続人が相続発生時に遺留分を主張しない旨を家庭裁判所に許可してもらうことです。遺留分という法律上当然に認められた権利を放棄するわけですから、単に被相続人と相続人間の約束だけではなく家庭裁判所の許可を受けて初めて遺留分の放棄が認められます。
当事務所に寄せられる遺留分の放棄を行う相談内容としては、例えば離婚した配偶者の子が相続発生時に遺留分を主張しないということを生前に確定させておくといったことがあります。遺留分をあらかじめ放棄しておくことで、離婚した配偶者は遺言を作成する際に遺留分の主張が行われないことが確信して遺言を残すことができます。そのほかにも、子に家業を継がせるために遺言を残しつつ、配偶者が遺留分をあらかじめ放棄しておくことで遺言の内容を不動のものにしておきたいといったことなども遺留分の放棄の動機となります。
遺留分の放棄の申立て
遺留分を放棄できるのは第1順位の相続人のみであり、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申立を行います。「許可」という言葉通り、申し立てると必ず認められるわけではなく、家庭裁判所の許可が必要です。とはいっても、ほとんどの遺留分放棄の申立ては許可されていて、却下率は2%程度と言われています。
遺留分を放棄するには、それなりの理由があるはずです。実際に遺留分を放棄するには申立の理由も必要ですが、何よりも重要なのは遺留分の放棄を申し立てた者が自らの意思に基づいて申立を行っているかどうかということです。被相続人が強要して遺留分放棄の申立をさせているような場合は当然のことながら却下されます。遺留分の主張が相続人の権利である以上、その権利の放棄を強制することは誰にもできないのです。
また、遺留分を放棄する者が未成年者の場合には親権者の同意が必要になります。ただし、遺留分の放棄が利益相反に該当する場合には特別代理人の選任が必要となります。例えば離婚した配偶者の相続について未成年者の子が遺留分を放棄する場合、親権者である配偶者は遺留分の放棄に同意することができます。しかし、婚姻したままで子が遺留分の放棄をするということになると配偶者は同意できず特別代理人の選任が必要です。配偶者もまた相続人になり、子の遺留分放棄によって利益を受けるためです。
当事務所でも遺留分の放棄についてのご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている