住民票の住所は生活の本拠地に置く

相続の仕事をしていると、遺産分割協議書の作成などで相続人のご住所を確認することが多々あります。そんなときに、しばしば現在住んでいる住所と住民票上の住所が異なる人がいます。いまでは成年年齢も18歳に引き上げられて、学生の相続人で自ら遺産分割協議に参加するということも増えてきました。

相続の手続き的には印鑑証明書上の住所と遺産分割協議書上の住所があっていれば相続登記や金融機関の手続きは進めることができるので不具合はありませんが、実際には何かしら問題が起こることはあるのか考えてみます。

住基法では、住民票上の「住所」は以下のように定義されています。

住民基本台帳法
第4条 住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第十条第一項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。
地方自治法
第10条 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。

もう少し具体的に定められているのかと思いきや、住所についてはこれだけしか定められていません。一般的には生活の本拠地を住所として定めることになっています。生活の本拠地ということなので、持ち家で暮らしていればそこが住所ということになりますし、賃貸で一人暮らしをしていればそこが住所ということになります。

例外的に親元を離れて一人暮らしをしている学生については、その一人暮らしが学生期間だけのものであり、またもとの住所に戻るということが確実であれば、実家の住所を住民票上の住所として残しておくことも差し支えないようです。おそらくこれは、住民票の単位である「世帯」のとらえ方に基づいていると思います。世帯とは、居住と生計を共にする単位です。同じ家に住んでいても、生計が別であれば住民票上は別世帯です。学生の場合には仕送りで生計を立てている人も多く、生計を共にしている状態に近いためにこのような解釈が生まれるのかもしれません。(といっても居住を共にしていない以上別世帯、つまり別住所にすべきだと考えられますが。)住民票上の住所は住民税の課税の基礎にもなる重要な情報ですが、学生の場合はほとんど親の不要の範囲内、つまり年収103万円以内に抑えてアルバイトなどをしているため、自治体としてもあまり学生の住所にこだわるメリットがないのかもしれないです。

そうはいっても、今では18歳以上は成年として選挙権を持っていることを考えると、選挙権の行使に支障が出ないようにたとえ学生だったとしても住民票は一人暮らしをしている住所に移すしておいたほうがよいでしょう。

また最近では2拠点で生活している人も増えてきています。その場合には、どちらの住所でより長く過ごしているかということで住民票上の住所を決めればよいでしょう。