Last Updated on 2023年3月20日 by 渋田貴正
定期贈与とは?
贈与にはいくつかの形態がありますが、その一つに定期贈与があります。定期贈与は民法上は以下のように定められています。
民法 第552条 |
定期の給付とは、「毎年100万円ずつ贈与する。」といったように、贈与者と受贈者の契約によって定期的に行われる贈与です。「定期」という言葉の定義は明確には行われていませんが、贈与契約上、双方である程度決まった時期に贈与が行われることが分かっていれば定期贈与という扱いになります。
定期贈与といっても上記の条文だけなので、通常の贈与とその内容が大きく変わることはありません。書面で贈与契約が行われていなければ、未履行の部分については各当事者によっていつでも解除することができます。定期贈与の場合は定期的に贈与が行われますので、すでに履行が終わった部分と未履行の部分というのが区別しやすく、「贈与するのは今年まで」といえば、そこで贈与契約も解除されることになります。ただし、書面で締結された贈与契約については、贈与契約の内容に従うことになります。
定期贈与の場合は、贈与者または受贈者の死亡によっても失効します。つまり定期贈与については、その効力は一身専属で、受贈者や贈与者が死亡してもその相続人には効力が当然には引き継がれません。相続後も定期贈与を続けたければ、相続人と残った当事者の間で、再度定期贈与の契約を締結する必要があるということです。
定期贈与に関する贈与税
定期贈与に関する贈与税については、以下のような相続税法の条文をもとに、定期贈与の最終的な総額で判断するのではという考え方があります。
(定期金に関する権利の評価)
第24条 定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次の各号に掲げる定期金又は一時金の区分に応じ、当該各号に定める金額による。 1.有期定期金 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
(中略)
ハ 当該契約に関する権利を取得した時における当該契約に基づき定期金の給付を受けるべき残りの期間に応じ、当該契約に基づき給付を受けるべき金額の一年当たりの平均額に、当該契約に係る予定利率による複利年金現価率(複利の計算で年金現価を算出するための割合として財務省令で定めるものをいう。第三号ハにおいて同じ。)を乗じて得た金額
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このように、定期金に関しては将来的に受け取ることができる金額の1年あたりの平均額に定期贈与の年数を乗じた額をもとに計算します。そのため、10年にわたって100万円ずつ贈与するとすると、贈与契約をした年に
100万円×10年×複利年金原価率(10年なら0.9945)=994.5万円
の贈与が行われたものとして贈与税を計算してください、ということです。
毎年定額の贈与は、それぞれの年で贈与税を計算すればよい
定期贈与も定期金に関する権利といえますので、こうした計算になるのもうなずけます。ただし、書面による贈与でなければ双方がいつでも贈与契約を解除できるため、定期金契約が完全に成立しているとはいいがたいです。そのため、口約束の贈与であれば、毎年贈与していくということを決めていたとしても定期贈与として贈与税を計算せずに、毎年の単純贈与として計算して差し支えないです。受贈者からすれば、いつ解除されるかもわからない口約束の定期贈与のために贈与税を前払いするようなことはあり得ないでしょう。
書面による定期贈与契約であれば一方的な解除ができないため、上記の定期金に関する評価に従って贈与税を計算するべきでしょう。
親が子に対して毎年110万円ずつ贈与していくといったことはしばしば行われていますが、あえて書面によらない口約束贈与にしておいたほうが無難とも言えます。親子間なので、あえて贈与契約など締結しなくてももめることもないでしょう。民法で書面によらない贈与の存在を認めている以上、税務当局も「贈与契約がないとはどういうことだ。」なんてことは言えないはずです。この場合、あえて毎年贈与額を変更するなど面倒な細工もする必要はありません。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。