遺言は撤回できる
遺言を作成した後に事情が変わってその内容を変更したいということもしばしば起こります。ただ、遺言は民法の決めた方式に従って作成する文書です。そのため、遺言の内容の変更や撤回についてもルールが決められています。いったん作成した遺言についての撤回については以下のように定められています。
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
第1025条 |
遺言を撤回するには新たに遺言を作成するということが一般的です。遺言が民法で定められた形式に従って作成している以上、口頭での撤回など民法に定められた方法以外での撤回をすることは認められません。
撤回の方法は、別の遺言で、「〇年〇月〇日作成の遺言については、その内容を撤回する。」とストレートに記載する方法もありますが、新たな内容の遺言を作成することで、前の遺言を撤回する方法が多いです。
別形式の遺言間でも撤回できる
例えば最初の遺言を公正証書遺言で作成していて、そのあとの日付で新たに自筆証書遺言を作成していたことが分かった場合、あとに作成された自筆証書遺言が優先されますので、自筆証書遺言の内容と抵触している公正証書遺言の内容は撤回したものとみなされます。
遺言は書かれた日付も非常に重要ということです。
抵触している部分がなければ複数の遺言が有効になることもある
遺言は遺言の方式で撤回できます。それでは遺言が2通発見されて、抵触する部分がなければどうなるのかといえば2つとも有効な遺言として成立します。新たに遺言を作成したからといって、前の遺言がなかったことになるというわけではないということです。
例えば、A土地は妻に相続させる旨の遺言のあとに、A土地は長男に相続させる旨の遺言を作成すれば一つ目の遺言は撤回されたものとみなされますが、2つ目の遺言がB土地を長男に相続するという内容であれば、遺言は2つとも有効になります。
相続人としては、もし複数の遺言が発見された場合には、それぞれの作成日付や内容に抵触している部分がないかということをしっかりとチェックする必要があります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている