相続人以外への相続分の譲渡
人が亡くなったときに、相続人ではない人が同居していることがあります。例えば、父または母の再婚相手が亡くなって、ずっとその再婚相手が所有している家で連れ子であるAさんが同居していたけど養子縁組はしていなかったといったケースです。
このケースでは、亡くなった再婚相手の兄弟姉妹(または甥姪)が相続人になり、その家にはAが住み続けたいけどAは相続人ではないため、遺産分割協議を相続人と行うことはできないといったことになります。
遺言があり、かつ遺言執行者が指定されていれば、他の相続人の関与なく、遺贈の登記によってAに持分を移転させることができますが、遺言が残っていなければ、まずは相続人が不動産を相続することになります。しかし、相続人としてもすでに居住しているAに相続不動産を譲りたいと考えているとします。
こうしたときにAに所有権を移転させるために行われる手段の一つのが、相続人から第三者への相続分の譲渡です。
第三者への相続分の譲渡と登記
上記のようなケースでは、兄弟姉妹は、そもそも自らが相続人であるということを認識していないケースも多くあります。そうした場合には、まずは相続人の住所を調査し、相続人であることを通知することから相続手続きを開始する必要があります。通知後に、相続放棄を選択する相続人もいれば、通常の相続人として手続きを行うケースもあります。
結局相続分を譲渡するかどうかは相続人の意思次第になりますが、相続分の譲渡の意思表示があれば、相続物件を第三者が取得することができます。
ただし、この場合でも被相続人から相続分の譲渡を受けた第三者に直接所有権を移転させることはできません。被相続人から所有権を移転できるのは、相続・遺贈・死因贈与などに限られます。この場合、もし相続人が相続登記を申請しようとしなければ、相続分の譲渡を受けた第三者が相続人に代位して相続登記を申請することもできます。
第三者への相続分の譲渡は、いわば相続人から第三者への贈与となります。そのため、登録免許税の税率は贈与に準じて20/1000となります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている