中国籍の人でも日本で遺言を遺せるのかということについて、よく当事務所にも問い合わせがあります。
結論から言えば中国籍の人でも日本で遺言をすることができます。
そもそも外国籍の人が日本国内で遺言を作成するには3つのクリアするポイントがあります。
1)本国の法律で遺言の制度があるかどうか
2)遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか
3)不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか
中国の法律で遺言の制度があるか
まず、遺言については以下のように定められています。
法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
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そして、中国では、遺言の制度がありますので、遺言自体は残すことができます。
遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか
そのうえで、遺言の方式については、以下のように定められています。
遺言の方式の準拠法に関する法律
第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。 |
「行為地法」とは、とある法律行為をする地の法律のことです。公正証書遺言であれば、遺言という法律行為を行うのは日本国内の公証役場なので行為地法は日本です。
そのため、公正証書遺言については必ず行為地は日本になります。また、不動産に関する遺言についても不動産の所在地が日本国内にあれば海外で残した遺言であっても日本の民法の方式で残すことが可能です。
不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか
不動産や動産の相続にについて日本の法律を適用できるかどうかも重要な要素です。
その点中国の法律では以下のように規定されています。
不動産 | 不動産所在地の法律を適用する |
動産 | 被相続人死亡時の居住地の法律を適用する |
つまり、いわゆる「反致」によって、不動産については日本の民法によって相続手続きを行い、動産については亡くなった時点で住んでいた場所の法律を適用することになります。そのため、もし日本国内で中国籍の人が死亡した場合は、不動産も動産も日本の民法によって相続手続きすることになります。もし、亡くなった地が中国など外国であればその国の法律が動産には適用されます。
例えば、マンションなどの不動産を日本に所有する中国籍の人が日本に住んでいる間に亡くなった場合、マンションの所有権や、マンションの中の家具、現預金などの動産は日本の法律が適用されます。もし、中国籍の人が中国で亡くなった場合、マンション自体は日本の法律が適用されるが、現預金その他の動産については中国の法律に基づいて相続手続きを行うということになります。
そのため、遺言の対象にできるものも、亡くなった時点の居住地に左右されるということになります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている