Last Updated on 2025年1月2日 by 渋田貴正
取締役の役員報酬は臨時株主総会での改定でも問題ない
取締役の役員報酬の決め方については会社法で以下のように定められています。
(取締役の報酬等)
第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。 一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
(中略)
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「定款に定めていないとき」には株主総会の決議で定めるということになっていますが、実際に定款に役員報酬の額そのものを規定することはなく、株主総会の決議で個別の取締役の報酬額、または取締役全体の報酬総額を決めることになります。
この場合、通常は定時株主総会で決めることになります。これは定時株主総会の開催が決算日から3か月以内であることが通常であり、かつこの期間が法人税法で規定されている「定期同額給与」の改定期日である会計期間開始の日から3か月という期間ともマッチしているためです。
しかし、役員報酬の改定は定時株主総会でやらなければならないわけではありません。会社法上は「株主総会の決議」としか書いていないため、臨時株主総会でも会社法上は問題ないということです。また、法人税法上も改定時期は「会計期間開始の日から3か月」と決められていますが、どのように改定するかということまでは定められていません。
取締役の役員報酬を臨時株主総会で定めるケース
役員報酬の改定を臨時株主総会で行うケースとしては以下のようなものが考えられます。
・資金調達の関係で金融機関に早めに確定した決算書を提出するため、定時株主総会を早めに開いて決算書の承認をしたが、役員報酬の額の決定については時間がかかりそうな場合
・役員へのボーナスの額を検討しているため事前確定届出給与の届出を行いたいが、金額の決定はなるべく先延ばしにしたい場合
いずれにしても株主総会を開催するのにほとんどコストがかからないような会社、かつ一人社長の会社など役員報酬の改定額について社長が柔軟に決定することができるような会社において有効な方法です。株主が多い会社では株主総会の開催コストが大きいので、セオリー通り定時株主総会で定めることになろうかと思います。
ただ、役員報酬の改定は定時株主総会に限らないため、小規模な会社においては定時株主総会では決算書の承認や役員の重任決議などを行って、役員報酬の改定は別途臨時株主総会で行うスタイルも可能です。この場合、臨時株主総会の開催は税務上の改定期限(定期同額給与なら会計期間開始の日から3か月、事前確定届出給与なら会計期間開始から4か月)には注意を払っておく必要があります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている