フィリピン国籍の被相続人の相続放棄の可能性

日本在住のフィリピン人の増加に伴い、日本在住のフィリピン人の相続の相談も増えてきました。そんな中で、フィリピン国籍の被相続人について相続放棄ができるかどうかという相談も増えてきています。そのためフィリピン人の相続放棄についてまとめました。

家事事件手続法

第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

上記の通り、日本に最後の住所があった場合には、フィリピン国籍の被相続人であっても日本の家庭裁判所が管轄権を有します。

しかし、もう一点そもそもフィリピンの法律で相続放棄という制度があるかどうかという問題があります。いくら日本の家庭裁判所が管轄権を有していても、そもそも本国の法律で相続放棄が定められていなければ相続放棄をすることはできません。

この点フィリピンの法律では、日本のように相続人の協議で分割方法を決める包括承継主義ではなく、裁判所が指定する者による分配を行う管理清算主義が採られています。管理清算主義のもとでは負債を清算後にプラスの財産が残った場合のみ分配が行われるため、そもそも相続放棄ということが成立しないことになります。

そのため、もし日本で亡くなったフィリピン国籍の人が日本国内で債務を負っていた場合、まずはフィリピンの法律を債権者に説明して弁済を拒むということも考えらえます。ただ、このような理屈が債権者によっては通用しないケースもあり、そのようなときは日本の法律に基づいて相続放棄ができないかを検討します。

本来であればフィリピンの法律で相続放棄が規定されていない以上、日本の家庭裁判所で相続放棄の申立てをするということはできないのですが、一点可能性があるとすれば公序の適用です。

法の適用に関する通則法

第42条 外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。

いずれにしても、フィリピン国籍の被相続人の相続放棄はイレギュラーな手続きです。当事務所のように国際相続に詳しい専門家に依頼することをオススメします。

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