包括遺贈と特定遺贈については、一般的に以下のように区分されます。
内容 | 例 | |
包括遺贈 | 目的となる財産を定めずに割合で定める遺贈の方法 | 甲に遺産の2分の1を遺贈する |
特定遺贈 | 目的となる財産を定める遺贈の方法 | 甲に不動産の全部を遺贈する |
遺産全体に対する割合で定められているかどうかで包括遺贈か特定遺贈か決まるということです。例えば「甲に預金総額の2分の1を遺贈する」という場合、割合で定められていますが、預金以外に不動産などの財産があれば、あくまでこの文は預金部分について割合を決めているだけなので特定遺贈です。
それでは例えば遺産がA銀行の口座と不動産のみである被相続人が「甲にA銀行の口座の預金すべてと不動産のすべてを遺贈する。」という内容の遺言を残していた場合はどうなるのでしょうか?この場合、預金口座と不動産という財産を特定して遺言を残しているため特定遺贈に該当するように思えます。しかし、被相続人が自らの財産がA銀行の口座と不動産であることに認識してこの遺言を残したのであれば、この遺言は包括遺贈として扱うべきです。とはいえ、このケースで被相続人の遺産がA銀行の口座と不動産のみであるということは第三者が証明することは非常に困難です。もし遺言内でこれが全財産であるなどが付記されていなければ、登記手続きなどは特定遺贈として進める方が無難でしょう。
また、「甲にA銀行の預金の2分の1、乙にその他すべての財産全部を遺贈する」といったケースでは、甲への特定遺贈、乙への包括遺贈というように特定遺贈と包括遺贈が併存した遺言もあり得ます。
包括遺贈に該当するか特定遺贈に該当するかについては遺言を作成した被相続人がどのような意思で遺言を作成したのかということによります。
包括受遺者は相続人と同じ扱いになって遺産分割協議への参加が必要など、包括受遺者に該当するか特定受遺者に該当するかは、受遺者にとって大きな違いを生み出します。
このあたりは遺言の文面の解釈や財産内容によりますので、迷った場合は司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている