合同会社の持分は相続できる?
合同会社の社員が死亡した場合、合同会社の定款に特段の定めがなければその社員は退社となります。合同会社は人的結合が重視されるため、株式のように持分そのものが相続財産として承継されるわけではなく、原則的には社員の死亡によって退社となり、相続人が承継するのは持分払戻しをうける権利ということになります。
しかし、定款に定めることで相続人が持分そのものを承継して社員になることも可能です。
会社法 第607条
第608条
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相続人による持分の承継が行われる旨が合同会社の定款に定められていた場合、相続人が複数いた時に、持分は遺産分割の対象となるのでしょうか?
原則的には合同会社の持分は遺産分割の対象にならない?
合同会社の持分が遺産分割の対象にできるかどうかということは会社法には何ら定めがありません。しかし、相続人の遺産分割協議だけで合同会社の経営に関与する人を選択することができるということは合同会社が人的結合を重視するということと反します。また、会社法上も一般承継できる旨しか書いていない以上、まずは被相続人の持分は相続人の共有になると考えられます。
そのうえで、その他の社員の同意を得て持分を譲渡することによって本来遺産分割協議で実現したかった持分割合に持っていくというのがあるべき流れと思われます。
なお、合同会社とは事情は違いますが、合資会社では持分は遺産分割の対象にならないという判例があります。
いずれにしても合同会社の社員に相続が発生した場合には、相続人だけで遺産分割協議することでその他社員に対してその持分の取得を主張するのではなく、まずは相続人全員の共有という形にしたうえで、合同会社の定款の定めに従った持分譲渡の方式によって特定の相続人に持分を集めるということが必要になろうかと思います。
一方、一般承継の旨が定款に定められていなくて、持分払戻し請求権が発生した場合は、その請求権をどの相続人が取得するかは遺産分割で決めてよいでしょう。あくまで会社と相続人の間に生じるのは金銭債権だからです。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている