Last Updated on 2025年1月3日 by 渋田貴正

会社設立後に発行済みの株式を他者に譲渡したり、株主だった人から株式を譲り受けたりすることがあります。この時に注意すべきポイントはどのようなものでしょうか?

非公開会社で株式を譲渡する場合、会社法と税法の2つの面から考える必要があります。

会社法の面 譲渡する手続きが適切かどうか
税法の面 譲渡する金額が適切かどうか

手続き面で注意すべきポイント

まずは、手続き面からです。

非公開会社の場合、株式には譲渡制限がかかっていますので、制限の内容に応じて手続きを取る必要があります。株式の譲渡を有効にするためには株主総会や取締役会の承認が必要です。一人社長の会社であれば事実上は関係ありませんが、株主が複数いる場合は定款上の譲渡制限の規定に従って社内での承認手続きを取っておく必要があります。

厳密にいえば、社内の承認がなくても当事者間の譲渡は有効ですが、その譲渡を会社に対して主張できません。そのため、承認なく譲渡制限株式の譲渡を受けた人は株主としての権利を行使できないということになります。

譲渡承認する機関が株主総会であれば、譲渡にあたって臨時株主総会(タイミングが合えば定時株主総会)を開催して、承認したのであればその旨を株主総会議事録に残しておきましょう。

税法面で注意すべきポイント(買い手が個人の場合)

次に税法面で注意すべきポイントです。

このときに譲渡を受ける者が個人か法人かで税法上の扱いが異なってきます。

例えば発行時は1株1万円だったものが、利益を積み上げた結果、1株5万円の評価額になったケースを考えてみます。

このときに個人に対して発行時と同じ金額で100株譲渡した場合、本来は100株×5万円=500万円の価値があるものを100万円で売買したということになります。このとき税法的にはいったん500万円でやり取りしてから、400万円を贈与したと考えます。

つまり、株式の買い手はいったん500万円を既存株主に渡し、その後既存株主から400万円の贈与を受けたと考えます。そのため、100万円の支払いで済んだ買い手は400万円の贈与に対して贈与税を支払う必要が発生します。

贈与税の課税を避けたければ、年間の贈与税の基礎控除額110万円以内に差額が落ち着くように設定することをオススメします。(ほかに株式の買い手が贈与を受けていないことが前提ですが。)

税法面で注意すべきポイント(買い手が法人の場合)

上記のケースで、譲渡を受ける者が法人の場合、法人には贈与税という概念がないため別の計算があります。

個人から法人に対して法人に対して「著しく低い価額の対価(資産の時価の2分の1に満たない金額)で譲渡があった場合、時価で譲渡があったものとみなして課税するというルールがあります。

つまり上記の例でいえば、既存株主が500万円で売却したものとして所得税が課税され、法人側は時価よりも低い対価の支払いで済んだ金額(400万円の贈与部分)は受贈益として収益に計上します。

既存株主からすれば100万円しか受け取っていないのに500万円受け取ったものとして課税されるので全くよいことがありません。

法人に対して株式を譲渡する場合は、せめて時価の50%になるように設定することが重要です。

上記のケースはいずれも株式の「時価」の算定が重要です。特に利益が出ている会社の株式を譲渡する場合は税理士に相談の上進めることをオススメします。