台湾国籍の人は日本で遺言を残せるのかということについて当事務所にもしばしば問い合わせがあります。

結論から言えば台湾国籍の人でも日本で遺言をすることができます。

そもそも外国籍の人が日本国内で遺言を作成するには3つのクリアするポイントがあります。

1)本国の法律で遺言の制度があるかどうか

2)遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか

3)不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか

台湾の法律で遺言の制度があるか

まず、遺言については以下のように定められています。

法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

そして、台湾では、遺言の制度がありますので、遺言自体は残すことができます。

遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか

そのうえで、遺言の方式については、以下のように定められています。

遺言の方式の準拠法に関する法律

第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。
一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

「行為地法」とは、とある法律行為をする地の法律のことです。公正証書遺言であれば、遺言という法律行為を行うのは日本国内の公証役場なので行為地法は日本です。

そのため、公正証書遺言については必ず行為地は日本になります。また、不動産に関する遺言についても不動産の所在地が日本国内にあれば海外で残した遺言であっても日本の民法の方式で残すことが可能です。

しかしここで台湾(中華民国)についてその他の国にはない独自の問題があります。それは、そもそも台湾の法律を準拠法として扱ってよいのかということです。日本が国際的に正当政府として認めていない関係で建前としては台湾国籍ということも認めないということになります。この点は国際的な政治問題であり、実務としてはそのことを前提にする必要があります。

その点については、以下の条文を類推適用することになります。

法の適用に関する通則法(本国法)
第38条
(中略)
3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

上記の条文は二重国籍の件ですが、中華人民共和国と台湾の法律をあたかも二重国籍のように考えて密接関係地法、つまり台湾の法律を適用するという扱いになっています。理屈はさておき、台湾国籍の人は台湾の法律に基づいて相続関係を判断してよいということになります。

不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか

不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうかも重要な要素です。

その点について、台湾では、相続は被相続人の死亡の当時の本国法による旨が定められています。

結局は台湾の法律が適用される関係で、日本の公証役場での公正証書遺言の作成はできないものと考えられます。しかし、台湾には自筆証書遺言の制度もありますので、自筆証書遺言を日本で残すことは可能であると考えられます。

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