タイ国籍の被相続人の相続放棄の可能性

日本在住のタイ国籍の人の増加に伴い、日本在住のタイ人の相続の相談も増えてきました。そんな中で、タイ国籍の被相続人について相続放棄ができるかどうかという相談も増えてきています。そのためタイ人の相続放棄についてまとめました。

家事事件手続法

第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

上記の通り、日本に最後の住所があった場合には、タイ国籍の被相続人であっても日本の家庭裁判所が管轄権を有します。

しかし、もう一点そもそもタイの法律で相続放棄という制度があるかどうかという問題があります。いくら日本の家庭裁判所が管轄権を有していても、そもそも本国の法律で相続放棄が定められていなければ相続放棄をすることはできません。

この点タイの法律では、ドイツ民法や日本民法から多くの条文が採用されていて、日本と同様に相続放棄が認められています。そのため、日本で亡くなったタイ国籍の被相続人については日本の家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることが法律上可能です。

また1点注意しておかなければタイは人的不統一国、つまり宗教によってはタイの民法ではなくイスラム法が適用される場合があるということです。タイでは人口のおよそ5%をムスリムが占めているといわれています。被相続人がムスリムだった場合には、イスラム法での検討が必要となります。

ただし、タイで相続放棄が認められているということを証明するためにタイの法律を調査して、該当する条文を提出するなど、日本国籍の被相続人の相続放棄よりも必要書類が多くなります。

タイ国籍の被相続人の相続放棄については、当事務所のように国際相続に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。

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