相続放棄の国際管轄

今では海外で亡くなる日本国籍の人も多くなりました。そんな中海外で亡くなった日本国籍の人について相続放棄したいという問い合わせを受けることもあります。

それでは海外で亡くなった日本人について、日本の家庭裁判所で相続放棄できるのでしょうか?

「海外で亡くなる」といっても旅行中に海外で亡くなるケースもあれば、海外に移住して移住先で亡くなるというケースもあります。前者であれば、旅行中の事故ということで日本の居住者であることには変わりないので日本の家庭裁判所で相続放棄が可能です。

一方、海外に移住している日本人が海外で亡くなった場合については注意が必要です。

相続放棄の可能性について考えるには、
1)相続放棄という制度そのものがその国に存在しているかということ
2)存在していたとして管轄権があるのかということ
の2点から考えていく必要があります。

まず、相続放棄という制度が存在しているかといえば、日本には相続放棄の制度が存在しているので、相続放棄という行為そのものは可能です。

それでは、その相続放棄を日本の家庭裁判所に申立できるのかということについては、以下のようになっています。

家事事件手続法

第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

上記の通り、被相続人の住所または居所が日本国内にある場合に日本の家庭裁判所が管轄権を有するということになっています。

海外に住んでいた日本人が亡くなった場合、相続放棄は日本でできない

つまり、亡くなったとき海外に住所を有していた人の場合、たとえ日本人であったとしても日本の家庭裁判所に相続放棄を申し立てることはできないということになります。この場合、管轄は死亡した国にあるので、死亡した国の制度に則って死亡した国で相続放棄を申し立てるということになります。

一応、移住先の国の裁判所が機能していないなど一定の事情があれば緊急管轄というものが認められる場合もありますが、これは非常に例外的です。

基本的には、海外に住んでいた日本人が亡くなった場合、たとえ日本人だったとしても日本の家庭裁判所に相続放棄の申立手を行うことはできないと考えておいた方がよいでしょう。

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