Last Updated on 2025年1月4日 by 渋田貴正

会社設立前に資本金を使えるケース

会社の設立を決めてから会社設立を実際に登記申請するまでには一定の期間があります。その間に設立後の会社のため、または会社設立そのもののために出資金の一部を消費することがあります。会社設立までの間に資本金を使ってよいのかという疑問を持つ方も多いので整理しておきます。

そもそも株式会社を設立する前までに発起人が支払うべき金額として挙げられるのが以下の支出です。

設立手続きそのものを目的をする支出 定款認証費用、登録免許税、設立時株式を募集するための募集費用
会社成立後に特定の財産を譲り受ける契約(財産引受け)のための支出 設立後に会社が譲り受ける在庫や不動産などの購入費用
その他の開業準備のための支出 オフィスや店舗の賃貸借の費用、在庫の購入費用など

上記のうち、2つめの財産引受けについて定款に記載が必要で、金額によっては検査役の選任が必要です。財産引受けは設立後の会社が取得するモノについて設立前に事前に売買契約をしておくことをいいます。定款に記載のない財産引受けは無効ですが、そもそも財産引受けに該当する事例はそう多くありません。あくまで設立後の会社が取得する財産のための契約であり、設立前に在庫やパソコンなどの固定資産を発起人が購入して、それを設立後の会社のために利用することは財産引受けではありません。

もう一つの設立手続きそのものを目的とする支出については、会社法上「設立費用」に該当します。設立費用についても定款への記載や検査役の選任が原則として必要ですが、定款認証手数料や登録免許税といった法的に必要となる実費については定款に記載されていなくても当然に設立後の会社に帰属させられます。

そのため、「会社設立前に資本金を使ってしまって問題ないか?」という話が出たときは、その多くは3つ目の開業準備のための支出となります。開業準備のための支出については、会社法では定めはなく、専ら法人税などで創立費に該当するかどうかという点だけが議論されます。

会社法には開業準備費用についての規制もなく、実際に購入してしまっているのであれば財産引受けにも該当しません。結局は、会社設立前に資本金を使って会社設立後の在庫や備品を購入したり、オフィスや店舗などの契約金を支払うこと自体は何ら問題がないということになります。

ちなみに、合同会社についてはそもそも社員相互間での合意があれば出資金をどのように使うかということの規制はなく、自由に使用して問題ありません。

一つだけ言えることは、株式会社にしても合同会社にしても資本金とすべき金額は設立後の会社に帰属しますので、開業準備のための支出以外では使用してはいけないということです。