制限行為能力者の違い

民法上、判断能力(いわゆる事理弁識能力)が不十分である人に対する制度として設けられているのが、成年後見制度、保佐制度、補助制度の3つです。これらの審判を受けた人を制限行為能力者といいます。(実際には未成年者も制限行為能力者なので、制限行為能力者は計4種類です。)

この3つは判断能力の不十分度に応じて以下のように扱われます。

成年後見

    • 対象者: 判断能力がほとんどない人(例: 認知症が進行した高齢者など)。
    • 後見人の権限: 日常生活に関するすべての法律行為について、後見人が代理で行うことができます。
  • 保佐
    • 対象者: 判断能力が著しく不十分な人(例: 軽度の認知症、高齢者など)。
    • 保佐人の権限: 特定の重要な法律行為(例: 不動産の売買、大きな金額の契約など)について、保佐人の同意が必要です。
  • 補助
    • 対象者: 判断能力が不十分な場合がある人(例: 認知症の初期段階など)。
    • 補助人の権限: 補助人が家庭裁判所の審判により、特定の法律行為について同意権・取消権を持ちます。
成年後見 保佐 補助
対象者の判断能力 判断能力がほとんどない 判断能力が著しく不十分 判断能力が不十分な場合がある
後見人等の選任方法 家庭裁判所が選任 家庭裁判所が選任 家庭裁判所が選任
後見人等の権限 全面的な代理権・同意権、取消権 特定の法律行為に対する同意権・取消権 特定の法律行為に対する同意権・取消権(必要に応じて)
相続に関係する違い

相続が発生した場合、相続人の中に成年被後見人、被保佐人、被補助人が含まれている場合、以下のような違いがあります。

成年後見 保佐 補助
遺産分割協議 遺産分割協議において、成年後見人が代理 遺産分割協議において、保佐人の同意が必要 遺産分割協議において、補助人の同意が必要な場合がある
相続放棄 成年被後見人が単独で相続放棄の申立てをすることはできない。成年後見人が家庭裁判所の許可を得た上で申立て 被保佐人が単独で相続放棄の申立てをすることはできない。保佐人の同意が必要であり、場合によっては家庭裁判所の許可も必要 被補助人が単独で相続放棄の申立てをすることは、補助開始の審判により特定の法律行為について補助人の同意が必要とされていない限り可能

上記のようにそれぞれの制度で違いがあります。

もし、相続人の中にいずれかの制限行為能力者が含まれている場合は通常と手続きが異なってきますので注意が必要です。

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