時効完成後、時効援用前に占有者に相続が発生した場合

不動産などの時効取得には①占有開始、②時効完成、③時効援用という3つの時点が存在します。

この3つの時点を考慮すると時効と相続の関係については以下のようなパターンが考えられます。所有者とは登記上の所有者などを指し、占有者とは実際にその不動産を占有している者を指します。

パターン1 占有開始前に 所有者に相続発生
パターン2 占有者に相続発生
パターン3 時効完成前に 所有者に相続発生
パターン4 占有者に相続発生
パターン5 時効援用前に 所有者に相続発生
パターン6 占有者に相続発生
パターン7 時効援用後に 所有者に相続発生
パターン8 占有者に相続発生

この中で、パターン6の時効援用前に占有者に相続が発生した場合について説明します。

この場合、時効は完成していますが、援用をしていないので時効の効力は発生していません。時効の効力は援用、つまり相手への時効取得の主張によってはじめて生じるものだからです。この場合で、占有者の相続人が時効取得を援用した場合、その効力はもともと占有を開始した被相続人が占有を開始した時点にさかのぼって効力を発生します。

つまり。占有者である被相続人の相続人は被相続人が完成させた時効の効力を享受できるということになります。

時効援用前に占有者に相続が発生した場合の登記手続き

 

この場合、時効完成時点での占有者は被相続人であるため、時効取得により所有権を取得する者も被相続人であるように思われます。民法上も時効取得については「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」と定められているため、時効完成時の占有者である被相続人が不動産を取得して、その後相続登記を経て相続人の所有権登記を行うのが法的な流れです。

しかし、登記の実務上は、すでに亡くなっている被相続人への所有権移転登記ではなく、直接相続人への時効取得による所有権移転登記を行うことを認めています。

そのため、登記義務者を所有権の登記名義人、登記権利者を相続人全員とする所有権移転登記を行うのが登記上の取り扱いとなります。

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