時効完成前に占有者に相続が発生した場合

不動産などの時効取得には①占有開始、②時効完成、③時効援用という3つの時点が存在します。

この3つの時点を考慮すると時効と相続の関係については以下のようなパターンが考えられます。所有者とは登記上の所有者などを指し、占有者とは実際にその不動産を占有している者を指します。

パターン1 占有開始前に 所有者に相続発生
パターン2 占有者に相続発生
パターン3 時効完成前に 所有者に相続発生
パターン4 占有者に相続発生
パターン5 時効援用前に 所有者に相続発生
パターン6 占有者に相続発生
パターン7 時効援用後に 所有者に相続発生
パターン8 占有者に相続発生

この中で、パターン4の時効完成前に占有者に相続が発生した場合について説明します。

この場合、取得時効が完成していないため、占有者の相続人が取得時効を援用することになります。占有権は相続されるため、被相続人が占有していた期間についても相続人が相続することになります。

そのため、例えば被相続人が悪意であれば20年間の占有が必要になります。占有開始から15年目に被相続人が亡くなった場合、相続人はあと5年間の占有を継続すれば取得時刻を援用することができます。

ちなみに、相続人が複数いて、そのうち1名だけが実際に占有している場所を引き継いだ場合でも、別の場所に居住している相続人は占有権を相続して取得時効を援用できます。占有権の相続は権利の相続であって、占有しているものそのものを引き継ぐ必要はないということです。

時効完成前に占有者に相続が発生した場合の登記手続き

この場合、時効完成時点での占有者は相続人であるため、時効取得により所有権を取得する者も相続人です。そのため、時効援用して登記上の所有者から占有者への所有権移転登記を行う場合も、亡くなった被相続人への移転ではなく、相続人への所有権移転ということになります。

もしこのとき、占有開始時点では生まれていない相続人だったとしても、出生前の原因日付で所有権移転登記を受けることができます。

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