土地などの不動産について時効取得のための占有期間が経過し、法律上の時効取得の期間を満たしたら、時効取得をしたことを外部に示すために所有権移転登記を行う必要があります。

しかし、所有権移転登記は通常時効取得をした者単独では申請できず、登記上所有者となっている者の協力が必要です。具体的には印鑑証明書の提供や書類への実印の押印が必要です。

しかし、時効取得を援用して所有権を取得する場合、登記上の所有者が進んで登記名義の変更に協力するケースはほとんどありません。よほど不要な土地であれば協力してもらえる可能性はありますが、資産価値のある不動産であれば、対価なく所有権を失う時効取得の登記に協力してもらえる可能性は限りなく低いでしょう。そこで時効取得を援用する際には訴訟を提起するケースが多いです。

時効取得の援用するための訴状の記載事項

時効取得による登記手続きを求めるための訴訟で訴状に記載する原因については、短期取得時効と長期取得時効で記載内容が若干分かれます。

例えば土地の時効取得の援用のための請求の原因としては以下の通りです。

【長期取得時効を主張する場合】
1 当該土地を、占有開始時において、原告が占有していたこと
2 当該土地を、その20年後の時点において、原告が占有していたこと
3 原告が、被告に対しその時効を援用するとの意思表示をしたこと
4 被告が、当該土地に所有権の登記を有していること

【短期取得時効を主張する場合】
l 当該土地を、占有開始時において、原告が占有していたこと
2 当該土地を、その10年後の時点において、原告が占有していたこと
3 当該占有の開始時において善意であることについて過失がなかったこと
4 原告が、被告に対しその時効を援用するとの意思表示をしたこと
5 被告が、当該土地に所有権の登記を有していること

時効取得の要件のうち、「所有の意思をもった占有であること」「公然の占有であること」「平穏の占有であること」は推定されるため、訴状で請求の原因に含める必要はありません。また、占有の継続についても、占有開始時点と時効取得の期間満了時点の占有が証明できればその間の占有は継続されていたと推定されますので、20年間(善意であれば10年間)ずっと占有していたことまでは証明する必要はありません。

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