Last Updated on 2025年1月3日 by 渋田貴正
所得税の居住者と非居住者の区分
所得税上、居住者か非居住者かを判断する基準は、以下のいずれかを満たすかどうかということです。満たせば居住者、満たさなければ非居住者です。
・日本国内に「住所」を有する
・現在まで引き続いて1年以上居所を有する
条件自体は単純ですが、この住所や居所といった言葉の解釈で居住者に該当するか非居住者に該当するか迷うケースも多いです。
所得税法の「住所」とは客観的な事実で判断するとなっています。住基法で住民票登録しているから居住者というわけではないということです。同じ「住所」という言葉を使っていますが、所得税法と住基法では扱いが大きく異なります。
日本ではこの住所の認定について日数などの明確な基準は設けられておらず、住居の有無・職業・資産の所在地・親族の居住状況・国籍・国内滞在日数などから個別に判断するというスタイルが採られています。例えば海外居住が200日程度あるケースで日本よりも海外に滞在する日数が多かったとしても、家族は日本に住んでいるといったケースでは単に出張が多いだけで出張先が海外に過ぎないということで日本の居住者扱いになる可能性があります。
このように日本では居住者か非居住者かを判断するための「住所」の有無についてはケースバイケースでの判断となります。
国際課税の183日ルールとは
国によっては1年の半分超つまり183日間を海外で過ごせば居住者か非居住者かをデジタルに判断する国もあります。
この183日ルールで居住者か非居住者を判断する主な国としては以下の通りです。
- カナダ
- オーストラリア
- イギリス
- ドイツ
- フランス
- イタリア
- スペイン
- 韓国
- 中国
- シンガポール
主に英米系の国で採用されている考え方といえます。
いつからいつまでの間に183日間なのかということについては、国によって判定期間が定められています。
一般的には以下のような基準があります。
1. 暦年(1月1日から12月31日)
- 多くの国では、暦年(カレンダーイヤー)を基準として、1月1日から12月31日までの間にその国に滞在した日数をカウントして、居住者か非居住者かを判定します。
- この期間内に183日以上滞在すると、その国の税務上の居住者とみなされる場合があります。
2. 任意の連続12か月間
- 一部の国では、確定申告の課税期間の開始日など、特定の開始日を基準とした連続する12か月間で183日を判定することがあります。
また、滞在が複数年にまたがる場合、各暦年で183日未満でも、連続12か月間の基準を適用すると183日を超えることがあり、居住者とみなされるケースもあります。
こうした基準については、現地の国の税法に従うので、現地の法律を確認したり、現地の税理士によく確認しておくことが重要です。
ただし、このルールも租税条約の有無などによって変わってきます。
また、海外在住の役員については、もし租税条約を締結している国に居住している場合、上記のようなルールに関わらず日本での課税になる場合があります。
具体的な適用方法や例外規定は国ごとに異なりますので、居住している国の具体的な税法や実務的な取り扱いを確認しておくことが重要です。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている