相続開始後に一人の相続人が共同相続した不動産を占有している場合

不動産を時効取得するには、占有開始時点において自らのために行う占有、つまり自主占有であることが必要です。そして、共有物の自主占有の場合は、共有者の一人が事実上共有地の全体を占有していたとしても.その占有が共有地全体に対する自主占有であるとは認められません。これは相続で不動産を共同相続した場合でも同じです。

被相続人の死亡によって共同相続が開始したとき,その共同相続人の一人が単独で当該土地の占有をしていたとしても,通常は.自己の相続分を超える分については他の共同相続人のための他主占有であり.その土地の所有権の全部について,単独で占有している共同相続人の自主占有は認められないということになります。

ただし、もし相続人が単独相続であることを信じていた場合などには、実際には他の相続人がいたとしても他の相続人の持分についても自主占有が成り立つ可能性があります。とはいえ、相続登記が義務化されていますので、10年も20年も相続登記をしないまま占有だけを継続するということは現状では考えにくいため、上記のような相続開始後に一人の相続人による他の相続人の持分の時効取得ということは現実的にはあり得ないかもしれません。

遺産分割協議が成立すれば単独での時効取得の援用も可能になる

それでは共同相続人の一人が不動産全体の時効取得を単独で主張できないのかといえばそうではありません。相続した不動産を一人の相続人が占有している場合、遺産分割協議が成立して、占有している相続人が占有権を単独相続したということが遺産分割協議書上明らかであれば、その単独相続した相続人から不動産全体の時効取得を主張することができます。遺産分割協議の効力は相続開始時点に遡及するため、相続開始時にさかのぼって単独で占有権を相続したということになります。

ただ、この場合、登記上の所有権名義人は占有者ではなく所有者であるため、時効取得を主張するためには、あえて占有権の相続についても遺産分割協議書に盛り込んでおく必要がある点に注意が必要です。

また、遺言により特定の相続人にその不動産の占有権を相続させることが明確であれば、その場合もその相続人が単独で不動産全体の時効取得を主張することができます。

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