遺言の効力を失効させるのに条件を付けることの可能性

遺言で記載した内容について特定の状況が発生したら特定の内容を失効させることはできるのでしょうか?答えは「可能」です。

例えば、配偶者に対して不動産を相続させるが、もし死後に配偶者が再婚した場合にはその不動産を配偶者に相続させる遺言の効力を失効させるといったことです。

民法
(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

上記のように、民法上は特定の条件の成就で効力が「発生」する停止条件付の遺言のみを規定していますが、解除条件付きの遺言書も実務的に認められています。

上記のようなケースで配偶者に不動産を相続させるという遺言をしておきながら、妻が再婚した場合に、その遺言の効力を相続開始時に遡って失わせるのは、死後に配偶者の心理的な自由を束縛してしまうのではという考え方もあります。しかし、そもそも遺言者が自分の財産を誰にどう承継させるかは自由です。上記の例でも、解除条件付き造言によって妻が再婚して遺言の効力が失われたとしても、妻としては、遺留分侵害額請求権を行使できるわけで、解除条件付きの遺言自体が無効になることはありません

条件成就のタイミングと遺言の効力の関係

もし遺言書に書かれた解除条件が遺言者の死亡前に成就してしまっていたらどうなるでしょうか?上記の例のように配偶者の婚姻を解除条件にする場合は二重婚が認められない以上、生前に条件が成就するということはあり得ませんが、例えば独身の子が婚姻したら効力を失効させるといった内容を含んだ遺言などで、被相続人が存命の間の条件成就があり得ます。

この点については、以下の条文も合わせて考えます。

民法
(既成条件)
第131条
  1. 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
  2. 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。

つまり、すでに亡くなる前に解除条件が達成されていれば無効、つまり遺言内のその記載はなかったことになるということです。上記の条文から考えると以下のようになります。

遺言者が亡くなる前に解除条件成就(例でいえば亡くなる前に婚姻している) 遺言のうち、その部分はなかったものとして扱われる(遺言は無効として扱われる)
遺言者が亡くなった後に条件成就(例でいえば亡くなった後に婚姻した) 条件が成就(婚姻)したときに効力が執行する
効力を遡及させる遺言

条件を達成した場合に、遺言の効力を遡らせることも可能です。

民法
(条件が成就した場合の効果)

第127条

(中略)

3.当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

遺言の場合、当事者とは遺言を作成した人です。遺言内で遡及する意思を記載しておけば、条件が成就したときにさかのぼって効力を発生させることが可能です。

先ほどの配偶者が自分の死後に婚姻したら失効させるという内容の場合、以下のようになります。

第O条
遺言者は、その有する土地・建物を、遺言者の妻○○に相続させる。ただし、妻○○が再婚したときは、この遺言の効力は相続開始時に遡って失われるものとする。
2 遺言者は、妻○○が再婚した場合は、本条第1項記載の土地・建物を、遺言者の長男○○に相続させる。

上記のように、遺言内容としては、不動産の行き場がないケースを防ぐために、解除条件によって遺言が失効した場合の行先(上記では長男)を定めておくのが通常です。

また、解除条件付の遺言では解除条件付である旨の登記を付記しておくことで第三者に対抗することもできます。そのため、上記のような遺言の場合は遺言執行者を定めて、相続登記と合わせて、解除条件付である旨の登記を申請することで被相続人の意思を登記にまで反映させることができます。

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