Last Updated on 2024年12月30日 by 渋田貴正

定款認証手数料の改正

2024年11月22日、「公証人手数料令の一部を改正する政令」が公布されました。この改正は、資本金100万円未満の株式会社を対象とする定款認証手数料に関する規定を見直したものであり、2024年12月1日より施行されます。

新制度の概要

新制度において、現行手数料令第35条第1号が改正され、資本金100万円未満の株式会社の定款認証手数料が、特定の条件を満たす場合に限り、3万円から1万5,000円に引き下げられました。この特例措置を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 発起人が全員自然人(法人である発起人がいない)であり、その数が3人以下であること。
  2. 定款に、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が記載または記録されていること。(つまり、募集設立ではないこと)
  3. 定款に、取締役会を設置しない旨が記載または記録されていること。(つまり、取締役会非設置会社であること)

また、施行に際しては経過措置が設けられています。2024年11月30日以前に定款認証の嘱託が行われた場合には、認証が12月1日以降であっても従前の規定が適用され、手数料は3万円となります。(この経過措置も2024年12月1日以降に依頼する分には関係なくなりますが。)

定款認証手数料引き下げの背景

今回の改正は、特に小規模な株式会社の設立を支援する目的で行われました。資本金100万円未満で起業を目指す個人や少人数グループにとって、初期費用の負担は大きな課題です。手数料の減額は、この負担を軽減し、創業を促進する政策の一環といえます。

中小企業庁の調査によれば、スタートアップ企業の多くは初期資本金を抑える傾向があります。その理由は、初期投資を最小限に抑えることで、事業の柔軟性を確保し、運転資金を確保することが目的とされています。今回の改正は、このような現状を踏まえた措置です。

ただし、低すぎる資本金は融資などにも影響しますので、今回の特例の恩恵を受けるのは、資本金100万円未満でも差し支えない企業、例えばITエンジニアとして独立して当初からクライアントが決まっているといったケースや、初期投資を必要としないコンサルタントなどが該当すると考えられます。

新制度の施行により、一定条件を満たす定款認証の手数料が1万5,000円に引き下げられることで、小規模企業の設立に関する費用負担が軽減されることは間違いありません。

ただし、定款の内容が特例措置の要件を満たすか否かの確認も重要です。たとえば、取締役会を設置する予定がある場合は、特例措置の対象外となります。また、発起人に法人が入っていたり、発起人の人数が4名以上だと、15,000円ではなく最低でも3万円となります。

本改正により、起業のハードルが一部下がることで、スタートアップの増加が多少なりとも期待されます。(ただ15,000円安くなるから資本金を抑えようという選択をする人はそれほどいないと思うので、結果的に初期コストが低く済んだくらいの感覚かもしれませんが。)

ただ、開業率を上げるという意味では、定款認証手数料などのイニシャルコストだけではなく、法人税率などのランニングコストの引き下げも必要になるでしょう。
(開業率を上げるという意味では、イニシャルコストでも、もう少し登録免許税を引き下げることも検討したほうがよいかもしれません。)