Last Updated on 2025年1月5日 by 渋田貴正
日本では、所得税法上の「居住者」とは「日本国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上日本国内に居所を有する個人」を言います。そして、「住所」とは生活の本拠地、「居所」とは生活の本拠地とはいえないが一定期間継続的に滞在している場所を指します。
日本では、このような基準で居住者か非居住者かを判定しています。
一方で、国によっては別の基準で居住者か非居住者かを判定するケースがあります。例えば年間の滞在期間が183日以上ある場合に居住者と扱う「183日ルール」を採用している国もあります。
身近な国だと中国やシンガポール、韓国などはこうしたルールを採用しています。
ここで、日本とシンガポールを往復する生活をしている人を考えます。結果として年間の150日が日本、残りがシンガポールという場合、183日ルールだとシンガポールの居住者ということになります。
一方で、日本では183日ルールは採用しておらず、生活の本拠たる住所や1年以上引き続き住んでいる居所があるかどうかで判断します。
この人が家族が日本にいて持ち家に住んでいて日本ではそこに滞在している、日本法人の役員であるなど一定の事情があれば、150日間の年間滞在日数とはいえ、日本でも居住者として扱われる可能性があります。
こうなると、日本とシンガポールの2国で居住者扱いになる可能性がありますが、日本に限らず多くの国では居住者と非居住者で課税関係が異なりますので、こうした二重での居住者ステータスは二重課税などの原因となってしまいます。
そこで主要な国とは租税条約によってこうした問題の解決を図っています。
上記のように二重での居住者ステータスが発生してしまうケースでは、租税条約によって以下の基準でどちらかの国の居住者として扱うことになっています。
第1基準 人的及び経済的関係が最も密接な国
第2基準 その者が有する常用の住居が所在する国
第3基準 その者が国籍を有する国
第4基準 両国の権限ある当局の合意によって決めた国
無国籍者でない限り、最終的には第3基準で判定されるので、第4基準は現実的には適用されることはなく、通常は第1基準で判定します。
例えばシンガポール在住でも、収入源が日本で、持ち家も日本にあり家族は日本に住んでいるといったケースでは人的、経済的関係が日本のほうが密接な関係にあるということで日本での居住者、シンガポールでの非居住者という扱いになる可能性が高いです。
結局は個別の事情になりますが、海外在住の方については、生活のスタイルに応じて、かつ租税条約に応じて判定をしていくケースも考えられます。
また、収入によってはこのような日本で法人化することで、こうした個人課税の判定を回避することも一つの手です。
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司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている