会社設立時の定款や相続時の遺産分割協議書など、法律をめぐる様々な場面で金額を表示する場面があります。そして、そのときに出てくる独特の言葉が「価額」です。この言葉は法的な書類の中にしか出てこないもので、普段法律的な書類のやり取りをしない人からすれば聞きなれない言葉だと思います。

この「価額」という言葉は、「金銭的評価を表した金額」ということです。ただ、これだけでは全く意味が分からないと思いますので、もう少しかみ砕いてみます。

そもそも「価格」とは、商品やサービスを購入するときの値段・売値を指します。つまり、大なり小なりマーケットがあって、そこで取引されている金額があれば、その金額が「価格」です。

一方の価額は価格のように市場で取引される金額がない場合にも金額として表現するために使う言葉です。例えば会社に出資するお金や現物出資、裁判等で確定した損害賠償金、保険金の支払いなどのための損害額などは市場で取引されるものではないため「価格」は存在しません。そこで、金額として表示するために価額という言葉を用います。

例えば民法では以下のような条文が出てきます。

民法

第904条 前条(特別受益者の相続分)に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

この条文には「価額」と「価格」という言葉が出てくる珍しいパターンです。特別受益者に行われた特別受益としての贈与の「価額」は、その贈与したモノの市場価格がその後上昇しても影響しないということを言っています。

分かりやすく、法律で「価額」や「価格」という言葉が出てきたら、以下のように置き換えてみればわかりやすいかもしれません。

価額 評価額
価格 市場価格

両者の違いを簡単にまとめると以下のような感じです。

項目 価格 価額
意味 商品やサービスの市場での取引金額 物やサービスの価値を金額で数値化したもの
用途 市場での売買や取引 保険、会計、法律などの専門分野
具体性 実際の取引金額 理論上や抽象的な価値
日常性 日常的・商業的文脈で使用 公的・専門的文脈で使用
使用例 「この商品の価格は5,000円です」 「資産価額を評価する必要がある」

日常生活ではほとんど「価格」を使いますが、ビジネスや法的な文脈では「価額」が適切な場合があります。それぞれの場面に応じて使い分けると良いでしょう。