Last Updated on 2025年1月1日 by 渋田貴正

一人が株主兼代表取締役である一人会社などの非上場会社や合同会社の社員に対しては会社の利益に応じた配当を行うことが可能です。そして、行った配当については、もちろん所得税が課税されます。

こうした非上場、非公開の会社が配当を行う場合には源泉所得税の徴収が行われます。配当にかかる源泉所得税率については、上場、非上場それぞれ以下のようになります。

分類

所得税および復興特別所得税 住民税 合計税率
上場会社の配当

下記以外 15.315% 5% 20.315%
発行済株式の総数等の3パーセント以上の株数または金額の株式等を有する個人(大口株主) 20.42% 0% 20.42%
非上場会社の配当
20.42% 0% 20.42%

上記の源泉徴収に関する表を見ただけだと、上場株式も非上場株式もそれほど税率が異ならないように見えます。しかし、ここには源泉徴収の税率以外の重要なポイントがあります。それは、上場株式の配当にのみ分離課税が適用されるということです。

分類 選択可能な確定申告の方法 配当控除 備考
上場株式等の配当 総合課税
申告分離課税(全額について適用)
源泉分離課税(全額について適用)
総合課税なら適用できる – 申告分離課税は、確定申告の際に選択可能。
– 大口株主等を除く。
上場株式等の配当(大口株主) 総合課税 適用できる – 申告分離課税や確定申告不要制度の適用不可。
上場株式等以外の配当 総合課税 適用できる – 申告分離課税や確定申告不要制度は選択不可(ただし、少額配当の場合を除く)。
上場株式等以外の少額配当 総合課税
確定申告不要制度(条件を満たす場合)
適用できる – 1社につき年10万円以下の少額配当については、確定申告不要制度を選択可能。

上記のように非上場の株式については源泉徴収だけでは課税が完結しないで、配当所得として総合課税の対象になります。総合課税とは、配当だけではなく、役員報酬や給与、その他の所得と合算して税率を適用する課税方法です。そのため、役員報酬を高く設定しているオーナー社長が、さらに配当も自分に支払うとなると税率も所得税+住民税で55%が配当所得にもかかってくるということになりかねません。源泉徴収段階で非上場株式の配当に住民税が課税されていないのは、結局総合課税で住民税が課税されるためです。

そのため、特に会社から役員報酬を多額に設定している非上場会社の社長については、さらに自分に配当を支払うほぼメリットはないといえます。ある程度の役員報酬であれば社会保険料も上限値になっているケースも多く、役員報酬の一部を配当に回して結果的に手取りが増えるということはほぼないといってよいでしょう。結局総合課税で配当所得にもそれであれば、経費(損金)として認められる役員報酬の形で支払った方が税金計算上は得策です。

唯一、非上場会社から配当を出すメリットとしては、確定申告時に配当控除を受けられるということがあります。配当控除の計算方法は複雑なので詳しくは割愛しますが、ざっくりと以下の表のようになります。配当控除はいったん法人税が課税された金額をさらに配当所得で課税されることによる二重課税を軽減するために設けられています。ただし、もともと固定税率で優遇されている上場株式の配当については配当控除が適用できず、総合課税の対象になる配当所得だけが配当控除の対象となります。

課税総所得金額等 計算方法 適用税率
1,000万円以下の場合 配当控除額 = 配当所得 × 10% 10% 配当所得が50万円の場合: 50万円 × 10% = 5万円
1,000万円を超える部分の場合 配当控除額 = (1,000万円以下部分 × 10%) +
(1,000万円超部分 × 5%)
10%(1,000万円以下部分)
5%(1,000万円超部分)
課税総所得金額1,200万円で配当所得50万円の場合:
(50万円 × 10%) + (50万円 × 5%) = 7.5万円

非上場会社の株式の配当については、配当時の源泉所得税の差し引きや、確定申告での課税方法の選択が重要です。これらを適切に行うことで、税負担を最小限に抑えることが可能です。

配当の税金や確定申告に関して不明点がある場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。詳細なシミュレーションなどを通してクライアント様のお役に立てるように全力でサポートします。お気軽にお問い合わせください。