Last Updated on 2025年1月6日 by 渋田貴正

相続時に台湾の戸籍を取得するには?

台湾国籍の方が亡くなった場合、日本で相続手続きを進めるために台湾の戸籍を取得するケースがあります。

相続人が日本国内にいる場合、相続手続きを進めるためには、相続人の一人が台北駐日経済文化代表処(事実上の大使館)を通じて手続きを行う必要があります。台湾の戸籍取得の手続きは日本の制度とは異なる点が多いため、事前にしっかりと準備を行うことが重要です。

代表処にはいくつかの分支機関があり、それぞれの地域を担当しています。具体的には、以下のようになっています。

地域 対応する弁事処 所在地
下記以外 代表処 〒108-0071 東京都港区白金台5-20-2
北海道 札幌弁事処 〒060-0004 北海道札幌市中央区北4条西4丁目1番地 伊藤ビル5階
神奈川県 横浜弁事処 〒231-0021 横浜市中区日本大通り60番地 朝日生命横浜ビル2階
静岡県 横浜弁事処 〒231-0021 横浜市中区日本大通り60番地 朝日生命横浜ビル2階
関西地方 大阪弁事処 〒530-0005 大阪市北区中之島2-3-18 中之島フェスティバルタワー17階
九州地方 福岡弁事処 〒810-0024 福岡市中央区桜坂3-12-42
沖縄 那覇弁事処 〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地3-15-9 アルテビル那覇6階

各地域の代表処についての詳細な情報は、公式のホームページで確認することが可能です。

台湾の戸籍を取得する方法

手続きを行う際、まず必要となるのが授権書への代表相続人の署名です。この署名は代表処の係官の面前で行う必要があり、その際に申請書、印鑑証明書、パスポートなどの身分を証明する書類を提出しなければなりません。これらの書類を事前に準備しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。署名が完了すると、通常は約2日後に弁事処から認証された授権書を受け取ることができます。

授権書の記載内容についても注意が必要です。特に、受任者として指定する人物は台湾在住の方である必要があります。この受任者は誰でも選ぶことができますが、住所、氏名、国民身分証番号などの正確な情報が必要となります。そのため、事前に受任者となる方からこれらの情報を取得しておくことが重要です。

ただし、例えば日本で戸籍を収集する場合にも司法書士や行政書士といった専門家ではない一般の人が集めようとすると困難であるのと同様に、台湾においても受任者が資格を持たない一般の方の場合、手続きや必要書類の収集に手間取ることが予想されます。そのため、台湾で資格を有する地政士に依頼する方が効率的です。地政士は、以前は司法書士や代書人と呼ばれており、手続きに精通しているため、多少の費用が発生しますが、迅速かつ確実に手続きを進めてくれます。

さらに、授権書の有効期間についても慎重に設定する必要があります。授権書の有効期限については1年程度の余裕を持たせておくことがおすすめです。これは、戸籍が不足している場合や手続きが長引いた場合に備えるためです。期間が短すぎると、期限切れとなり再度授権書の認証を行う必要が生じる可能性があり、手続きが遅延する原因となります。このような事態を防ぐためにも、余裕のある期間設定が大切です。

完成した授権書は、台湾にいる受任者(地政士など)へ郵送します。受任者は被相続人の戸籍を収集し、それらを台湾の公証人による認証を受ける必要があります。この認証を受けた戸籍はさらに外交部(日本の外務省に相当する機関)の認証を経て、日本の代表処に提出されます。最終的に、日本の代表処で認証を受けた台湾の戸籍が日本国内で正式な公文書として使用可能となります。

台湾の戸籍が正式に認証された後、それを日本の登記所で相続登記に必要な証明書として使用します。相続登記は不動産などの財産の名義変更に必要な手続きであり、この台湾戸籍の認証がその根拠書類として役立ちます。こうした一連の手続きは複雑であり、必要書類や手順を正確に把握しておくことが求められます。

台湾での相続手続きは、日本と異なる戸籍制度や法制度に基づいているため、現地の専門家のサポートを得ることが非常に有効です。また、日本の代表処や台湾の地政士との連携を密にし、手続きに必要な書類や情報を確実に準備することで、スムーズな進行が可能となります。相続人が日本国内にいる場合でも、台湾の関係機関との手続きが求められる点を踏まえ、早めの準備と適切なサポートを受けることが大切です。

当事務所では台湾国籍の方の相続手続きにも対応しています。お気軽にご相談ください。