Last Updated on 2025年1月11日 by 渋田貴正

法律や条約、条例などさまざまな法律がありますが、そうした法律についての優先順位はどのようになっているのかについて説明します。

まず、日本であれば日本国憲法が頂点です。憲法の中で法律の優先順位について定められた条文は以下の通りです。

日本国憲法 第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

この中では、憲法に反する法律等は無効であることと、条約や国際法は遵守すべきことが書かれています。憲法に違反する法律については無効であることが分かりますが、条約は遵守するとだけ書かれていて、優先順位までは分かりませんが、通説では憲法が条約に優先するということになっています。(そもそも憲法に違反するような条約を政府が他国と締結する場面があるかどうかという疑問もありますが。)

それでは、その他の法律と条約の優先順位についてはどのようになっているのかについてです。条約と国内法の関係については、「条約法に関するウィーン条約」という条約で多少言及されています。

条約法に関するウィーン条約

第27条 国内法と条約の遵守 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。

第46条 条約を締結する権能に関する国内法の規定
1 いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし、違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合は、この限りでない。

上記のように、ウィーン条約第27条は、「締約国は、自国の国内法を理由として条約を履行しないことを正当化することはできない」と定めています。これにより、国内法が条約に矛盾する場合でも、締約国は条約を履行する義務を負うとされています。また、第46条では、「条約の締結が締約国の憲法上の規定や重要な法律に違反している場合、無効と主張できる」とされています。しかし、これは国際法上の無効理由に関するものであり、国内法と条約の優先順位とは直接関係ありません。

ウィーン条約自体は、国内法と条約のどちらが優先かということを直接規定していませんが、条約の不履行の理由として国内法を用いることができないと規定することで、間接的に条約が国内法に優先するということを意味しています。実際に、条約と国内法が矛盾すれば、多くのケースでは国内法を改正して条約に合わせる形が採られます。条約が国際的な約束であり、国家の信用を損なわないために重要視されるということです。

例として、租税条約と所得税法や法人税法などの税法の関係について説明します。租税条約と法人税法や所得税法などの国内税法の関係は、国際的な課税ルールを調整するために重要です。租税条約は、二重課税の防止や租税回避の防止を目的とし、締約国間で優先的に適用されます。日本では、租税条約の規定が国内税法(法人税法や所得税法など)と矛盾する場合、租税条約が優先して適用されます。

例えば、外国法人や非居住者への課税において、国内税法で定められた税率よりも租税条約で低い税率が規定されていれば、租税条約の税率が適用されます。また、租税条約に基づく免税や減税措置も国内法より優先されます。

その他の法令関係については以下のようにまとめられます。

種類 制定主体 効力
憲法 国民(国会の議決を経て国民投票で承認) 最高法規として、すべての法令に優先 日本国憲法
法律 国会 憲法に次ぐ効力を持ち、政令、省令、条例に優先 民法、刑法、会社法
政令 内閣 法律を執行するための細則として法律に従属 道路交通法施行令
省令 各省庁 法律や政令を補完し、省庁の範囲内で制定 労働基準法施行規則
条例 地方自治体 地方自治の範囲内で有効、法律に従属 東京都の迷惑防止条例
条約 国(内閣が締結し、国会が承認) 国内法の一部として有効だが、憲法に従属 日米安全保障条約